優勝をおさめた青学は、その足で美咲の待つ病院へと向かった。 *** 「…皆、優勝したって事だよね?」 さっきの幸村さん達とのやり取りで青学がいい結果を残して次に進んだって聞いた。いい結果っていったら優勝をおいて他にないよね? ぼんやりと窓の外を眺めながらベッドに座っていると、凄い足音が耳に入ってきた。 「?」 そしてその足音はあたしの病室の前で止まり、それと同時にガラッと開く扉から飛び込んできたのは──、 「美咲!」 「リョーマ、皆//」 やっぱりというか、思った通りに現れた青学のレギュラー達に自然と頬がゆるむ。皆の手には、賞状やらメダルがあって、それだけで幸村さん達が言っていたことが本当だったんだと理解できた。 「優勝おめでとう!」 精一杯の笑顔を向けてそう言えば、一瞬キョトンとした皆から笑顔が返ってくる。 「美咲っ!」 「わっ//いたっ!痛いッ、リョーマ!」 「あ、ごめん…」 勢いよく抱きついてきたリョーマに傷が疼き、鋭い痛みが走る。慌てて痛いと告げればそっと体を離して謝るリョーマが何だか妙に素直で可愛くて──…、 痛みが吹っ飛んだ代わりに笑いがこみ上げてきた。 「へへ//リョーマ可愛い」 「意味、分かんないんだけど」 「ちゃんと亜久津さんに勝ったんだね」 「当たり前じゃん」 あたしの問いかけに笑顔で頷いてくれる彼に胸に広がる温かさ。正々堂々勝負して勝ったのはやっぱり凄いし気持ちがいいことだと思う。 「結構手こずったけどねー」 「売氛泪 「追いつめられてたしなあ?」 「売氛泪 「…リョーマ?」 先輩達の突っ込みにいつもなら反論するのに言い返せないのかされるがまま頭をぐりぐりされてるリョーマに首を傾げる。どうやら先輩達が言っているのは本当のようだ。 つまり、追いつめられたうえに負けそうだったわけだ…。何か想像できないんだけど。 「勝ったんだからどっちでもいーじゃないッスか」 「認めたね」 「認めた認めたー♪」 先輩達と戯れるリョーマを苦笑しながら見守っていると、乾先輩が不思議そうにあたしに問いかけてきた。 「俺たちが優勝した事、初めから知っていた様だが…誰かに聞いたのか?」 「え?」 乾先輩の鋭さには吃驚する。だけど気がついてくれてラッキーだった。あたしは今がチャンスとばかり、幸村さん達のことを口にする。 「実は、幸村さんて人のお友達がいい成績を残して関東に進んだって教えてくれて…それで¨俺達の事は貞治に聞けば分かる¨って」 あるがままの真実を口にすると騒がしかった先輩達まで急に黙りこんで表情を強ばらせた気がした。 「蓮二か…」 「王者立海、関東では避けられない強豪になるな」 乾先輩が蓮二と呼んだって事はやっぱり知り合いだったんだ。大石先輩は何だか考え込んだ顔して腕組んでるし…、王者立海って、もしかしてあの人たちと関東で当たるって事? 「立海って去年の優勝校ッスよね?」 「ああ、今年は三連覇を狙っている」 「…ふーん」 優勝校かあ…、じゃあ凄い強敵になるんだろうな。皆いい人たちみたかったけど、関東で会えるのが楽しみ// 「何ニヤけてんの」 「えっ//ニヤけてなんか!」 「…!(いいこと思いついた」 リョーマに指摘されて否定するも熱を持つ頬を押さえてパッと顔を逸らす。真っ赤になってるよ絶対。 「美咲」 「な、何?」 「勝ったご褒美ちょうだい」 「…は?」 あたしは、ズイッと顔を近づけて悪戯っぽい笑みを向けるリョーマにそのまま後退してしまう。 ご褒美って…、勝ったのリョーマだけじゃないじゃない(困) 「おい越前(汗」 「お前なあ(呆」 先輩達もいるのに、リョーマは構わずあたしの頬に手を添えてそのまま唇を重ねてきた。恥ずかしくて逃げたいのにはじっこまで追いつめられてそれは叶わず…。 「んっ//」 「…ん、ご馳走様」 「っ//!バカッ」 「クスッ」 やっと解放されたあたしは真っ赤になった顔を隠すためにリョーマの胸に頭を埋める。そんなあたしをそっと抱きしめてくれたリョーマの温かさを胸に感じながら小さく笑った。 都大会決勝応援できなかった分、関東大会ではいっぱい応援するからね! .... (オチビばっかずるい!) (俺は美咲の彼氏なんで) (そんなの関係ねーだろ!) (ちょっとおふざけが過ぎるんじゃないかな、越前) (……;) (リョーマー…?) (…何でもない) |