美咲と約束した。俺は絶対に負けない。てかぶっ倒してやる。 ギュッと握ったグリップに、桃先輩の頑張りを無駄にしない為に、青学の優勝は俺が決める。 *** 「越前、凄い顔してるね」 「まあ真剣なんだろうけど」 「こ、怖い…」 「プレイに私情を持ち込むとは──…」 苦笑して見守る青学のレギュラー陣に、手塚は小さく溜息をついた。 「けど、楽しそうじゃないッスか」 「足はいいのか?」 「何ともないッスよ」 足の手当をしていた桃城が後ろから顔を出して、そっと呟いた一言。それは、皆が感じていることでもあって、口には出さないが心の内で頷いていた。 きっと越前が優勝を決めてくれるという事も───…。 「そう言えば越前、試合前に美咲から連絡あったみたいだしね」 「えー!おチビだけズルい!」 「おい、英二(呆」 「越前だけじゃない。俺の所に全員に伝えてほしいと連絡がきていた」 伝えただろう、と真剣に言った手塚にポカーンとする面々。 「初耳だねー、不二?」 「うん、僕は英二と違ってちゃんと話聞いてたけどそんな事言ってなかったと思うな」 「どういう意味だよー!」 *** 「先輩等うるさい…」 コートの外でギャーギャー騒ぐ声を背に受けながら、必死に試合に集中する。何か調子狂う。 「おら、どうした小僧!」 「チッ…!あ…」 こっちだと動くものの全く正反対に打ち返されて、さっきからちっとも点が取れない。それに加えての先輩達の騒ぎに余計集中出来ないし。 こんな時、美咲がいてくれたら、 「負けたら承知しないからね」 「信じてる」 「!──」 パコーンッ!! 「フン、あの威勢はどこいった、あ?」 「……」 頭を過ぎったのは病室での美咲の笑顔と、激励の言葉。負けたら承知しない、か──…。 「かかってこいや!」 「じゃ、遠慮、なく!」 パコーンッ!! 「!……」 コートに響く軽快な音──、ボールは、回転しながら亜久津側のコートに落ちる。そしてそこからは、越前の追い上げが始まった。 *** 「片足のスプリットステップとは、いいデータが取れた」 「凄いよリョーマ君!」 「た、たまにはやるじゃん。越前の奴」 「堀尾君も素直に褒めればいいのに…」 越前の試合から完全に目を逸らし騒いでいた先輩レギュラーも今では、ボールを目で追って試合に釘付けになっている。 そんな中、一際いい音が響いて試合は終了した──。 「……」 「あんたの負け、俺の勝ち」 「!っ」 俺は試合終了時にそう言って直ぐ胸ぐらを掴まれて引き上げられた。 「往生際悪いんじゃない?」 俺がだんだんしまってくるキツさに声は上げず、キッと睨んでそう言えばハッとしたのか手を離した。 「美咲はアンタを庇いたかったみたいだから殴ったりはしない」 「!…(あの女…」 「美咲の傷、どれも浅かった…手加減するくらいなら何で傷つけたわけ?」 荒井先輩には容赦なかったみたいだけど…、ま、俺もあの人苦手だしどーでもいいけど← 「…てめぇには関係ねぇ、あの女が勝手にしたことだ」 「は?」 そう言って背を向ける亜久津さんに、俺は何も聞けずに立ち尽くす。意味、わかんないんだけど…。 「…女に伝えとけ」 「?」 「…また、会いに行ってやるってな」 「なっ!」 俺の答えも聞かずに、背を向けて手を振り去っていく後ろ姿を見つめたまま、絶対に会わせるか!と胸の内で叫んだのは言うまでもない。 .... (オチビー、よくやったぞ) (……重い、) (途中ハラハラしたけどな) (…負けないって約束したから) (!──、表彰式が終わったら直ぐに美咲の病院へ行こう) (!ウィッス) |