[携帯モード] [URL送信]
13.皆の温かい優しさ。

「越前…」


「……」


美咲は、竜崎先生と部長が救急車で一緒に同行していってくれた。俺は、手当だけしてもらって部室で座り込んでる。何か美咲に合わす顔がない気がして動けないってのが本音。


「おチビ…、俺たちこれから病院行くけど、どーするかにゃ」


「……」


「英二、今はそっとしておこう…」


「大石…」


先輩達には悪いけど、反応する気にもなれない…。大切に守ってきたはずの美咲が俺の所為で──。


「越前、ちゃんと来いよ」


「!…桃、先輩」


俺の頭に、さっきの場所に落としてきていた帽子をかぶせて桃先輩が部室から出ていった後、訪れた静寂が胸を締め付ける。


なんか、格好悪い…じゃん、俺。


俺は壁により掛かったまま、帽子を目深にかぶって、一人苦笑した。




***

「竜崎先生!手塚!」


「大石か…」


「越前は来ておらんのか」


ホッと一息つく手塚に対し、全員の顔を見回してから溜息をつく竜崎先生の二人は美咲の病室の外にいた。


「それより、美咲は何ともないの!?」


「2、3日は絶対安静だそうだ」


大石の横から顔を出した菊丸は不安気に眉を顰めながら二人に美咲の容態を確認する。それに答えたのは手塚だった。


「え…」


「準決勝には間にあわねぇのか…」


その答えに、皆がひきつった顔をして¨そんなに酷いのか¨と誰もが思い、病室に入れないでいた。


「俺、越前迎えに行ってくるッス!」


「おい桃城!」


桃城が迎えに行くと言って、来た道を引き戻すのを残されたメンバーは、何とも言えない表情で顔を歪めて見送り、誰も言葉を発そうとしなかった。


その場に重苦しい空気が流れる。




***

「んっ…」


鼻を擽(くすぐ)る薬品のにおいに、痛む身体。あたしは、目を覚ますと無理矢理状態を起こした。どうやらここは病院みたいだけど…。


「…うわっ、凄い怪我…」


自分が思っていたより、怪我は大きかったらしく、包帯の巻かれている箇所がほぼ両手両足を隠してしまっていた。まあ、拳一発お腹入った後に投げ飛ばされたからな;頭、痛い…。


だけど、あの時の痛みはもうそんなに残っていなくて(痛いけど)、ただあの人が言っていた言葉がずっと頭の中で木霊してた。


「…悪いが、我慢しろ」


何で謝ったんだろ…。謝るならこんなことしなきゃいーのに。てか投げ飛ばすときに悪いが我慢しろって何!?それで投げるってどうなの!


悪い人じゃないとか?
でも、やっぱり痛いんだけど…。


特に痛む頭に手を添えて、窓の外を眺めたあたしはそこから見えた光景に、つい身を乗り出してしまった。


「あでっ!」


ガラッ──────


「どうした!」


「美咲!」


瞬間、病室の外に来ていたらしい部員が一斉に中に飛び込んできた。いつからいたんだろ、てゆーか──、


「痛ーい!!」


「バカかお前!2、3日は絶対安静なんだぞ!」


「海堂先輩…、あ…皆さん、来てくれたんですね//」


ベッドから落ちて叫ぶあたしにかかった怒声は海堂先輩のモノで、涙目になりながら振り返ると、そこにはレギュラーの皆さんが勢ぞろいだった。否、桃先輩とリョーマはいないけど…。


「大丈夫かい?」


「あ、すいませっ…いてッ」


不二先輩が助け起こしてくれたけど、鈍い痛みが走って、つい声を上げてしまう。何かこの持続的な痛みってキライだ…。


「ごめん、痛かったね…」


「いえ」


ベッドに戻ると、ジンジン痛む頭が更に痛みを増していた。それに加えて無理に手ついたから腕も痛いときた。だけど、あたしは必死に笑顔を作って先輩達に向ける。心配なんてかけたくないもん。


「無理をするな」


「手塚先輩…」


ポンッとあたしの頭に乗った手塚先輩の手に、無理に入っていた力がフッと抜ける。


「そうだよん、俺らに気ぃ使う必要なんかないない!」


「英二先輩…」


「英二の言うとおりだよ。はいこれ、お見舞い」


「…わあ//ありがとうございます!大石先輩」


大石先輩がくれたお見舞いは、お菓子の詰め合わせ。別にあたしは病人じゃないから果物よりこっちのが嬉かったりして(笑)


「美咲、悪かったね。こんな目に遭わせて…」


「大丈夫です!あたしはこんな事じゃめげませんから…それに──、」


「「?」」


皆が首を傾げる中、あたしは胸の前で手を組んで、そっと目を閉じた。


「リョーマが来てくれたから…それだけで、いいんです」


「「───」」


そう、リョーマが助けに来てくれたから…、だからあたしはそれだけでいいの。あたしなんかの為に駆けつけてくれたことが凄く嬉しかったから。


美咲の言葉に、越前がどれだけ愛されているのか─、二人の間の絆の深さを思い知った面々だった。




....
(あ、!荒井先輩は──)
(大事ない。アイツもあれで青学で二年、鍛えてきたんだからな)
(そうそう、こんくらいでへばってもらっちゃ困るにゃー)
(よかったっ)


[*前へ][次へ#]

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!