[携帯モード] [URL送信]
07.勝利を誓う帽子。

「はい、これ持ってて」


「えっ、いいの?」


パフッとあたしの頭にかぶせられたのはリョーマの帽子。今日は格別涼しいわけじゃないのに、かぶってなくて平気なのかな?


「…俺がそれ受け取るときは勝ったときだから」


「も、もう//」


帽子の上から頭を撫でてくるリョーマに照れ笑いを返して、帽子の上から頭を押さえる。もう、そんな自信満々の笑顔で言われちゃったら頷くしかないじゃない。


そしていよいよ始まる二人の試合──


あたしは、リョーマの帽子を左右から押さえるようにして手を添えて、緊迫した空気の中、二人を見守った。




***

「あんた、不二先輩の弟なんだって?」


「……(怒」


「兄弟そろって、俺の美咲に手出さないでくんない?」


「は?」


意味が分からないのか、機嫌が悪いのか眉間にしわを寄せる裕太にラケットを向ける越前。


「…絶対俺がアンタに勝つ」


「上等だ」


試合を告げる審判の声がかかり、二人は敵意剥き出しで、試合を開始した。




***

「日差しが強いけど大丈夫なのかな?リョーマ…」


試合が始まって中盤に差し掛かった頃、太陽が真上に来て、凄く暑くなってきた。リョーマはいつも帽子をかぶって試合してるからキツいんじゃ…、と思いながら見ていると、裕太君のツイストスピンショットに翻弄されているリョーマは汗だくで。


「リョーマ…」


いつの間にかあたしはリョーマだけを目で追っていた。彼だけに思いを向けていた。それが届いたかのように決まる新技ドライブB!!


「これでツイストスピンは封じたよ。はいっどーする?」


リョーマの言葉にグッと言葉を詰まらせる裕太君。自分もガッツポーズをしていたことに驚きながらも、ことの成り行きを見守る。


「別にさ…」


「?」


「強いのはアンタの兄貴だけじゃないだろ。ま、アンタの目標は兄貴なんだろうけど…」


「だったら何だ!」


「俺はもっと上に行くよ」


上を指さして言うリョーマに、あたしは見惚れていて、その自信満々の笑顔が実現させることが出来ると物語っているようで、何だかワクワクしてきた。リョーマが上に行くまであたしは一番近くで見守っていたいな…。


「上に行く?そんなのは俺に勝ってからにしろよ」


「もちろん!」


何だか二人とも楽しそう。リョーマと裕太君の間には、もう険悪なムードはない。代わりに二人の間にうまれたのはお互いを高みへ導く為に必要な闘争心。頑張ってよね、二人とも。


「チェンジコート!」


そんなあたしが見守る中、審判の掛け声で戻ってきたリョーマの頭に、借りていた帽子をかぶせる。流石にもうベンチにいるあたしが借りているわけにはいかないから。


「?」


「あたしがずっと被ってたんだから負ける筈ない。これ被って頑張って!」


あたしがニコッと笑えば、キョトンとしていたリョーマが同じように笑い返してくれた。心なしか少し嬉しそうに見えるのは気のせいかな?


「やっと俺だけ見るようになった?」


「なっ//」


「図星だね、んじゃラスト決めてくるから」


リョーマに図星をつかれて顔に一気に集まった熱は冷めることなく、帽子をしっかりかぶると立ち上がるリョーマをそのまま見送る羽目になった。恥ずかしいっ。


「いってらっしゃい」


「…いってきます」


何とか羞恥心を抑え込めて口にしたあたしの見送りの言葉に、小さくだけど返してくれたその一言が凄く嬉しかったのは言うまでもなく、それから試合は真っ向勝負のまま進み、リョーマの勝利で幕を閉じた。




***

「ふう…負けたよ。強いなお前…」


「あんたが、弱いんじゃないの?」


「て、てめーっ!」


「ジョーダン、ジョーダン」


越前にのせられ逆上した裕太に背を向けて手を振る越前を目で追う裕太の先には、笑顔で越前を迎える美咲の姿があり、一つ目標が増えたと確信した裕太だった。


「これはまた強力な恋敵ですね。裕太君」


「そうみたいです」


観月と笑い合う裕太は、どうやら自分の兄貴¨不二周助¨に対しての¨憎しみ¨の感情は消え失せたようだ。


「スイマセン観月さん。後はお願いします」


「はい、任せて下さい」


一方青学側ではと言うと───、


「やったー!リョーマ君ナイスゲーム!」

「やるじゃんオチビ!」


「痛いッス」


リョーマと一緒にコートから出ると凄いのに盛り上がってる皆に自然と頬が緩むのを止めることが出来なかった。だってあたしだって嬉しいんだもん。


そんなまだ勝利の余韻に浸っていたあたしたちの横で、次の試合に出る不二先輩がスタンバっていた。


「美咲ちゃん、僕の時もベンチコーチしてくれるよね?」


「へ?」


「じゃあ行こうか」


あたしが首を傾げると頭からフワっと被せられた不二先輩のレギュラージャージ。返事を返すまもなく、あたしは不二先輩に連れられてコートに戻ることになった。


「えー!!」


「なっ!不二先輩!」


そのまま結局あたしは、不二先輩の試合もベンチコーチとして、一番近くで試合観戦することを認められた。




....
(越前、残念だったな〜)
(美咲取られてやんのー(笑)
(………何ッスか)
((──;(マジでキレてる))


[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!