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04.試合中の悪戯。

遅刻したのは凄く怒られたけど、直ぐに試合だったリョーマは何にも気にしてなかったみたい。


あたしは、ベンチコーチとしてコート内に入り、本当間近でリョーマの試合を観ることが出来る。


「リョーマ、頑張って!」


「ん」


都大会初戦は5試合すべてやることになっていて、手塚部長の試合も間近で観られる。だから、結構楽しみだったりするわけで…。


「チェンジコート」


審判の掛け声で、リョーマがベンチに戻ってくる。余裕な顔しちゃって…。


「快調だね」


「まあね」


相手校の人は、汗が凄いのに全く疲れも見せていないリョーマは汗すらかいていなかった。


「ついでに充電してこっかな」


「へ?…ん」


「ご馳走様」


一瞬何が起こったのか分からなくて、悪戯っぽく笑ったリョーマはそのままコートにはいった。


「「越前(オチビー)!!」」


コートの外から飛んでくる先輩達の声にハッと我に返り、何をされたのか悟る。


リョ、リョーマってば、
試合中にキ、キキキスした//っ。


そのことに真っ赤になって慌てていると、リョーマの試合は終了した。変なことするから、あっと言う間に終わっちゃって全然見られなかったし!


「このバカ!試合中に何してんだ!」


「いてっ」


試合が終わり、コートから出たリョーマは待ちかまえていた桃先輩に殴られてた。あー、痛そうっ(汗)でも試合中だったから、仕方ないね…なんて。


「美咲、預かっていてくれ」


「あ、はい!えっと…」


「?」


手塚部長から、タオルを預かると無意識のうちに呼び止めてしまっていたあたし。やっぱりマネージャーだし何か一言言わなきゃね!


「ラスト決めてきて下さい!」


「!…ああ」


頑張ってくださいっていうのも何だか変な感じがしたから、そう言うと、一瞬目を見開いてから、力強く頷いてくれた。


それから数10分で終わった試合にあたしはただただ吃驚するほかなかった。


でも、本気は出せてないんだろうな…って、それは素人のあたしから見ても分かる力差だったように思う。


「お疲れさまです」


「ああ、ありがとう」


お疲れじゃないように見えますけどこれは社交辞令のような決まり文句みたいなものだから…、と考えを巡らせながら、タオルを渡して、手塚部長と一緒にコートから出た。




***

その後順調に勝ち進んで、ベスト8で聖ルドルフ学院と当たることになった。ルドルフって言えば──。


「あ、裕太君の所なんだ…」


「知り合い?」


「うん、スクールで会ったことある。青学だって言ってたから会うの楽しみにしてたのに転校したって聞いて…」


試合のオーダー用紙を見ながらそこまで呟くと、後ろから誰かに声をかけられた。


「裕太が転校したのは僕のせいなんだ」


「あ、不二先輩…」


いきなり現れた不二先輩に振り返ると、少し寂しそうな悲しそうな顔をして、あたしの方を見返してきた。何で、不二先輩が─?


「不二裕太、正真正銘不二の弟だ。青学に入学はしたが、兄と比べられるのが嫌だったんだろう。テニス部にも入らず、転校していった」


「え…」


乾先輩がノートを見ながら、簡潔に解説してくれる。隣にいたリョーマは知っていたみたいで、少し気まずそうにしていた。この話はタブーだったんだ…。


「まさかこんな形でテニスで勝負することになるなんてね」


「…対戦相手俺なんスけど」


「分かってるよ」


リョーマの突っ込みを笑って流す不二先輩。だけど自分が対戦相手じゃなくても、弟と当たるのはいい気分じゃないよね…。


そんなあたしの気持ちを察してか、笑って頭を撫でてくれる不二先輩に心臓が大きく跳ねる。


「君が気に病む必要はないよ」


「はい…」


でも、気になっちゃうよ…。




....
(あたしは、裕太君も不二先輩も)
(大切な人だから……)
(出来たら仲直りしてほしい…)


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あきゅろす。
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