大分慣れてきたマネージャーの仕事。今日もドリンクを作りに、水道の所に来ていたら丁度、桜乃チャンが休憩に入った所とはちあわせした。 「桜乃チャン、お疲れー」 「あ、美咲チャン」 桜乃チャンは嬉しそうに笑ってあたしの所までくると、吃驚して目を丸くした。 「どうかした?」 「いつも、こんな量作ってるの?」 「あ、うん…」 ドリンクを見て吃驚したみたい。まあ、確かにあたしも最初は驚いたな…;蛇口をひねって水を止めると、皆の名前を確認してから籠に入れて持ち上げる。 「じゃああたし行かなきゃならないから」 「うん!頑張ってね」 「ありがとう」 桜乃チャンと微笑みあって別れると急いでコートに戻り、終わりに備えた。いよいよ明日から始まる都大会に向けて集中が高まる練習で、皆の顔は凄く輝いていた。 「青学ー、ファイ」 「「オー!」」 明日が大会ということもあり、今日は早めに練習を切り上げることになっていた。だから、今は最後の走り込みでそれが終われば今日の練習も終わり。 皆、凄く楽しみな顔してる…。 あたしも明日は凄く楽しみ! 微笑ましく皆を見守っていたら手塚部長の集合がかかり、あたしもそちらに移動する。 「お疲れ様、」 「サンキュ…」 リョーマから預かっていたタオルを渡すと軽く微笑み返してくれた。 「いよいよ明日は都大会初日を迎える」 リョーマの隣に来たとき、最後の占めの言葉にはいった手塚先輩の言葉に耳を傾ける。 「強豪校に当たるまでは心配いらないなどと、気の抜いた試合はするな」 それから一度言葉を切って部員全員の顔を見回してから前を見てハッキリした口調で言った。 「全ての試合全力でぶつかれ!油断せずに行こう」 「「はい!!」」 *** 「美咲チャン俺にも頂戴ー!」 「美咲、ドリンク」 「はい!」 手塚先輩の話が終わった後、一斉に集まった部員に用意したドリンクは全てなくなった。皆の口から¨ありがとう¨って聞く度に温かな気持ちになる。 「美咲、部長よんでる」 「え?」 「待ってるから、早く行ってきて」 「あ、うん!」 リョーマに言われて急いで部室に向かえば、竜崎先生と手塚部長が二人で密会(?)していた。 「あの…、手塚部長?」 「ああ、すまないな急に」 「いえ、それで話って?」 あたしがそう聞くと、とにかく座れと促され、椅子に腰を下ろす。 「実はな、明日だけお前さんにベンチコーチを頼もうかと思ってね」 「え?!む、無理です!」 何を言われるのかと不安いっぱいだったあたしに告げられたそれは、不安を大きなものに変えた。そんな大役あたしには無理だ。 「特にすることはない…、あいつ等が初戦から大きなミスをおかすとも思えん」 「ただ座ってるだけで十分なんじゃよ」 「だ、だからって何であたしなんですか!」 思わず張り上げてしまった声に二人は一瞬目を丸くし、直ぐに笑った(先生だけ)。 「コホンッ、部員からの指名だ…」 「指名ってクラブじゃないんですから…」 咳払いしてから言いづらそうにそう言う手塚先輩に苦笑するほかなかった。指名されたのは嬉しいけど、責任重大じゃないか。 「言い出しっぺはお前さんの彼氏だけどねぇ」 「え//」 「ああ、そうだった」 「リョーマが…?」 竜崎先生はからかうように笑って手塚先輩は真面目に頷いた。あたしが¨リョーマ¨に弱いところを利用して言ったんだろうけど、やっぱり嬉しいっ。 「引き受けてくれるか?」 手塚先輩の問いかけにあたしは躊躇なく頷いた。 .... (また一つ、) (君に近づけた気がした) |