「!あ、リョーマ!」 「見つけるの早すぎ」 「へへっ」 杏チャンと話し込んでいたら後ろから足音が聞こえて、振り返った先にいたのは、リョーマだった。直ぐ様抱きついたあたしを抱きしめ返してくれるリョーマに、一気に溢れてくる幸せを実感する。 それを微笑ましく見守ってくれていた杏チャンは、笑いながら行っておいでって送り出してくれた。 「バイバーイ!」 コートにいる皆に手を振って、リョーマと一緒にそこを後にした。 *** 「テニスしてくのかと思っちゃった」 「それは美咲が誤解しただけ…」 「じゃあどこ行くの?」 あたしがリョーマの自転車の後ろに乗ってからそう聞くと、リョーマは悪戯な笑みを浮かべてから頭をポンッと撫でた。 「内緒」 それだけ言うと、あたしを乗せた自転車は物凄いスピードで坂を駆け下りた。 「リョ、リョーマ!」 「つかまってないと落ちるよ」 「まっ、え!きゃぁあ!」 あたしは、リョーマにしがみついて絶叫しながら地獄の坂道の終わりを早くと、それだけを切実に願った。 *** 「…美咲、美咲!」 「あ、…つ、ついたんだ」 「まさか目瞑ってたの?」 目を見開いてあたしの顔をのぞき込むリョーマに、あたしはうっ、と言葉を詰まらせる。 「だ、だって!あんなスピードだして坂道駆け下りるんだもんっ」 「いい景色だったのに……、まあ、こっちの方が綺麗だけど」 そう言って前方を見据えるリョーマに、あたしも向きを変えて前を向いた。 「わあっ」 そこに広がっていたのは、真っ青な海──…。そう、リョーマが連れてきてくれたのは、あんまり近場とは言えない海岸。 「こっち」 「わっ!」 リョーマに手を引かれて堤防に二人で腰掛ける。こんなとこ来るのなんて凄く久し振りかもしれない。 「俺の秘密の穴場」 「!…そうなんだっ」 リョーマがそんな場所をあたしに教えてくれたことが凄く嬉しくてニヤケる自分。重傷だよ、あたし。 「何ニヤケてんの…」 「い、いひゃいよ」 リョーマに頬を引っ張られて、上手く呂律が回らない。ていうか絶対愉しんでるよ、リョーマ。 「柔らかい…」 「あしょはらいれー」 (遊ばないでー) 「クスッ、」 笑って頬から手を離したリョーマを軽く睨んで、頬をさする。きっと真っ赤になってるな。 「美咲」 「何よー…ん、」 少し怒気を込めて答えようと思ったら、唇に感じる温もり。それがキスだと分かるまでそう時間はかからなくて、あたしはそっと目を閉じてそれを受け入れた。 「…好きだよ」 「あたしも//」 改めて言われると照れるけど、嬉しいことに変わりはない。リョーマのかけてくれる一つ一つの言葉があたしの心を温めてくれるの。 そしてその日は、二人でのんびり夕日を眺めてから家に帰った。 *** 「美咲!遅くなるなっていったじゃない!」 「ご、ごめんなさい」 「俺が引き止めてたンス。すみませんでした」 「え?貴方は?」 「…彼氏ッスけど」 「ああ、君がリョーマ君ね!美咲からいつも話は聞いてるわ」 「ふーん…(ニッ」 「お母さん//!」 「良かったら夜ご飯食べていく?」 「…じゃお言葉に甘えて」 「えっ!」 その後、家族に散々質問攻めされたリョーマでした。 .... (姉ちゃんとどこまでいったの?) (キ───!) (変なこと聞くな!リョーマも真面目に答えないでよー!) |