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13.幸せ一杯だから。

「ところで美咲は何しにきたの?」


「あ、うん。リョーマが来るまで時間あるし、皆に差し入れと思って!」


そう言って、持ってきた差し入れを皆の前に差し出す。まあ大したものじゃないけど。


「わあ、流石美咲チャン」


「丁度のど渇いてたんだよねー!」


「助かるぜー」


皆が次々に、持ってきたドリンクを持ってってくれて凄く嬉しかった。喜んでもらえたなら何よりだしね。


「ありがとうね!アイツ等の邪魔さえなかったらあたし行こうと思ってたんだ!」


「全然!」


杏チャンにもいつも一緒に飲んでいた缶ジュースを手渡す。完璧でしょ?笑


「わあ、ありがとう!」


「いえいえ、じゃあ乾杯!」


「乾杯♪」


杏チャンは先輩だけど、出会ったときから敬語はいらないって言われてる。そのせいか、今では凄く仲が深まって、青学の友達より相談など出来る、頼れるお姉ちゃんって感じ。


「そういえば美咲ー、越前君と付き合ってるんだって?」


「ぶっ//」


口に含んでいたジュースを吹き出しそうになって慌てて口を押さえるあたしの隣では、肩を震わして笑いを耐えてる杏チャンの姿。


「な、何で知ってるのっ」


「だってお兄ちゃん達と帰るときに、見ちゃったし」


「何を肇


「え?抱き合って──」


「いい!もう、いい//!」


自分でも分かるくらい真っ赤になって、杏チャンの言葉を遮った。だって恥ずかしいしっ。


「クスッ、その様子だとラブラブなんだね」


「杏チャンっ!」


杏チャンは苦笑してから、ふっと思い出したように空を見上げながら口を開いた。


「そう言えば、桃城君が言ってたんだけど…」


「うん?」


「越前君と美咲の恋仲…、テニス部の皆、認めてないんだって?」


杏チャンは少し言いにくそうに口ごもりながらそれを切り出した。


「ああ…うん…」


まあ、杏チャンが言うことは間違っちゃいない。実際、リョーマもあたしを先輩たちから引き離そうとするし。


「大丈夫?」


「え?」


「付き合ってて辛くない…?」


まだ付き合って一月も経ってないのに、辛いかなんて分からない。だけど少なくとも今は、あたしにとっては幸せいっぱいの毎日にしか感じられないから。


あたしは、杏チャンをしっかり見つめてから口を開いた。


「すっごく幸せだよっ!」


あたしがそう言ってハニカんだら、杏チャンはホッとした様に笑ってくれた。


そうだよ──…、
今が幸せなら、きっと…。


これからだって幸せに満ち溢れた生活が待ってるに違いない。この時はまだ、自信を持ってそう言えたんだ。




***

美咲と杏が話し込んでいる時、既に来ていた越前は声をかけようにも、かけられず、近くに隠れていた。二人の会話があまりにも深刻で、何より美咲の気持ちがどうなのか知りたかった為でもあった。


だが、美咲は一瞬の迷いもなくキッパリ答える。


─「すっごく幸せだよっ!」


「!」


その一言に満面の笑み。嘘をついていないことは一目瞭然だった。


「……その笑顔は反則でしょ」


越前は、かぶっていた帽子を深くかぶり直し、美咲の元へと歩み寄った。




....
(安心とかそんなの感じる前に)
(俺って幸せだなって──)
(らしくもなく思った)


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