「ところで美咲は何しにきたの?」 「あ、うん。リョーマが来るまで時間あるし、皆に差し入れと思って!」 そう言って、持ってきた差し入れを皆の前に差し出す。まあ大したものじゃないけど。 「わあ、流石美咲チャン」 「丁度のど渇いてたんだよねー!」 「助かるぜー」 皆が次々に、持ってきたドリンクを持ってってくれて凄く嬉しかった。喜んでもらえたなら何よりだしね。 「ありがとうね!アイツ等の邪魔さえなかったらあたし行こうと思ってたんだ!」 「全然!」 杏チャンにもいつも一緒に飲んでいた缶ジュースを手渡す。完璧でしょ?笑 「わあ、ありがとう!」 「いえいえ、じゃあ乾杯!」 「乾杯♪」 杏チャンは先輩だけど、出会ったときから敬語はいらないって言われてる。そのせいか、今では凄く仲が深まって、青学の友達より相談など出来る、頼れるお姉ちゃんって感じ。 「そういえば美咲ー、越前君と付き合ってるんだって?」 「ぶっ//」 口に含んでいたジュースを吹き出しそうになって慌てて口を押さえるあたしの隣では、肩を震わして笑いを耐えてる杏チャンの姿。 「な、何で知ってるのっ」 「だってお兄ちゃん達と帰るときに、見ちゃったし」 「何を肇 「え?抱き合って──」 「いい!もう、いい//!」 自分でも分かるくらい真っ赤になって、杏チャンの言葉を遮った。だって恥ずかしいしっ。 「クスッ、その様子だとラブラブなんだね」 「杏チャンっ!」 杏チャンは苦笑してから、ふっと思い出したように空を見上げながら口を開いた。 「そう言えば、桃城君が言ってたんだけど…」 「うん?」 「越前君と美咲の恋仲…、テニス部の皆、認めてないんだって?」 杏チャンは少し言いにくそうに口ごもりながらそれを切り出した。 「ああ…うん…」 まあ、杏チャンが言うことは間違っちゃいない。実際、リョーマもあたしを先輩たちから引き離そうとするし。 「大丈夫?」 「え?」 「付き合ってて辛くない…?」 まだ付き合って一月も経ってないのに、辛いかなんて分からない。だけど少なくとも今は、あたしにとっては幸せいっぱいの毎日にしか感じられないから。 あたしは、杏チャンをしっかり見つめてから口を開いた。 「すっごく幸せだよっ!」 あたしがそう言ってハニカんだら、杏チャンはホッとした様に笑ってくれた。 そうだよ──…、 今が幸せなら、きっと…。 これからだって幸せに満ち溢れた生活が待ってるに違いない。この時はまだ、自信を持ってそう言えたんだ。 *** 美咲と杏が話し込んでいる時、既に来ていた越前は声をかけようにも、かけられず、近くに隠れていた。二人の会話があまりにも深刻で、何より美咲の気持ちがどうなのか知りたかった為でもあった。 だが、美咲は一瞬の迷いもなくキッパリ答える。 ─「すっごく幸せだよっ!」 「!」 その一言に満面の笑み。嘘をついていないことは一目瞭然だった。 「……その笑顔は反則でしょ」 越前は、かぶっていた帽子を深くかぶり直し、美咲の元へと歩み寄った。 .... (安心とかそんなの感じる前に) (俺って幸せだなって──) (らしくもなく思った) |