今日は久々に部活もなくて一日暇な休日。…だと思っていたけど、朝一番に携帯が鳴り響いて、ディスプレイには着信の二文字。 あたしは、携帯を手に自分の部屋に戻り電話に出た。 「もしもし?」 (俺だけど、…今日暇?) 「あ、リョーマ。うん暇だよ」 朝からかかってきた電話に内心迷惑な…とか思ったけど、相手がリョーマだと分かって逆に嬉しい気持ちでいっぱいになる。あたしって現金だな。 (近くのストリートテニスコート…分かる?) 「うん、杏チャンとよく行くから…」 (杏…?ああ、あの人─) 「知ってるの?」 (…不動峰の橘さんの妹でしょ?) 嗚呼そっか…、青学は地区予選決勝で、不動峰とあたったから知ってても変じゃないんだ…。ちょっと嫉妬しちゃったかな、あたし。 (…美咲、聞いてる?) 「あ、ごめん…えっと」 変な疑いを巡らせていたら、リョーマの肝心な話を聞き逃していた。 (…都合悪いの?) 「ううん、ボーッとしちゃって」 慌てて言い訳すると、リョーマはもう一度さっき言ったらしい事を繰り返してくれた。 「じゃあさ、あたし先に行ってていいかな?」 (?…いいけど、まだ約束まで時間あるよ…) 「いーの。杏チャンも先に行ってるなら、久々に会いたいし」 (分かった…じゃ、後で) 「またね」 ツー、ツー─── リョーマとの初デート…とは言えないけど、休日なのに会えるのは嬉しい。 本当は午後から行こうって言われたんだけど、あたしは先に行って待つことにした。久しぶりに、ストリートテニスコートに行くんだから皆に会える。そう思ったら少しでも早くコートに向かいたかった。 「お母さん、出かけてくるね」 「あら、お昼は?」 「外で食べてから行く!」 「そう、じゃああんまり遅くならないようにね?」 「はーい!」 あたしは、動きやすい格好に着替えて家を後にした。ただリョーマと会えるっていうことが楽しみで、足取りは凄く軽かった。 *** 「………」 「どうしたの?リョーマさん」 美咲に電話してからリビングに戻ってきた俺に首を傾げる従姉に、パタンと携帯を閉じてしまう。 「別に…」 「何か浮かない顔してたから、デートのお誘いでも上手くいかなかったのかと思っちゃった」 「……」←軽く図星 電話聞かれないようにテニスコートの方にいたのに…、変なとこ鋭いな。 「何だリョーマ。デートか」 「…親父には関係ない」 朝からニヤニヤして何考えてんだか分かったもんじゃない。もしつけられたら美咲に迷惑かかるし。 「あらやっぱりデートなの?」 「…テニス行くだけ」 「ははーん。それでここ最近、機嫌がいい──」 「ごちそうさま」 親父が調子乗り出す前に午前中の用を済ませる為、席を立つ。 「ちょーっとばかし冷たいんじゃねぇの?青少年」 「…今度連れてくる」 パタンッ──── 俺はそれだけ言い残して、リビングを後にした。 「楽しみですね、おじ様」 「ああ。アイツがテニス以外に興味持つなんてな…、こりゃおもしれー」 .... (つけちゃおっかなー) (駄目ですよ。リョーマさん機嫌損ねちゃいますから) (へいへーい) |