「全員集合!」 練習中にかかった手塚部長の声にテニス部全員が一気に集まる。あーあ、もうちょっとしてからでもいーじゃん。マネージャーなんてどうせ、小坂田とかなんじゃ─ 「美咲チャン!」 「今日からはいるマネージャーって彼女だったんだね」 「まあ、分かってはいたがな」 何の冗談だよ…、 美咲がマネージャー? 「おーおー、どうするよ越前」 隣にいた桃先輩がニヤッと笑いながら、頭を押さえつけてきた。地味に痛いんだよねこれ。 「い、痛いッスよ…!」 そう、先輩達が騒いでる現況は今日から入るって噂されていたマネージャーの事。 「今日から正式にマネージャーとして選手の体調管理及び身の回りの世話を任せることになった、みさ…コホンッ、香山美咲だ」 カチンッ──── 今間違いなく人の彼女呼び捨てにしようとしたな…部長っ。 「香山美咲ですっ。まだ分からない事ばかりで、ご迷惑おかけすると思いますが宜しくお願いします!」 美咲は気にした様子もなく挨拶して頭を下げた。その笑顔が余計なんだって(怒)また美咲に集る虫が増えるじゃんか。誰が追い払うと思ってんの← 周りの部員の表情を見れば歴然。美咲を見る目が変わってる。桃先輩とかだって、あんなはりきってるし…(苛) 「美咲には主にレギュラーの世話を任せるからね!しっかりやるんだよ」 「はい!」 「では何か意義のある者はいるか?」 頷いた美咲を見て話を纏めにかかる部長の方に向き直る。 「異議あーり」 「リョーマ!」 そのまま美咲の側まで行くと、横から抱き寄せて部員を睨みつけた。俺のだって言っとかなきゃね。 「美咲は俺のだから手ー出したら先輩でも容赦しないよ」 「ちょ、リョーマっ//」 真っ赤になって暴れる美咲を抱きすくめたまま部長を見上げる。 「いくら部長でもね」 「へ?」 「…何のことだ」 キッと睨むように視線を向ければそのまま返される視線。そんな時間が暫く続くのかと思ったら横から口を挟まれた。 「オチビー!マネージャーは公平に選手をフォローするんだぞ!」 「そうだそうだ!部活ん時まで独り占めできると思うなよ!」 「!…美咲は俺の彼女ッスよ」 何で彼女に他の男の世話なんかやらせなきゃなんないんだよ。意味分かんないし。 「まあ、まあ…美咲チャンは正式なマネージャーになったわけだし…」 「そうそう、あんまり言い合うと彼女が可哀想だよ」 喧嘩になりそうな雰囲気だった三人の仲際に入ってくれたのは、やっぱりというか、大石と河村の二人だった。 「け、マネージャーなんかに興味ねぇ…」 「だが海堂ともきっと気が合うぞ…彼女はね」 「どっからその自信わいてくるンスか…?」 眼鏡を光らせて怪しげに笑う乾に悪寒が走る海堂は顔をひきつらせている。 「ほ、惚れたー!!」 「荒井?!」 一方、美咲に一目惚れした部員も数少なくないという。 そして問題のカップルさんたちはというと──…。 「リョーマ怒りすぎだよっ」 「怒ってない…」 「明日朝練だって言うし、迎えに行くから、ね?」 「……ん、」 「じゃあ決まりねー」 そう言ってニッコリ笑った美咲が越前の腕に抱きついた。美咲の慰め一つで直ぐに機嫌が直る越前に対し、仲裁が入っても騒ぎがおさまらないテニスコート。 美咲が呼んだ大きな波乱はまだ始まったばかり──。 「全員、グラウンド30周!」 「「ええー!!」」 そして、それに耐えきれなかったらしい部長の雷が落ちちゃったとか何とかっていうのはまた別の話。 .... (美咲まで走んなくてもいいのに) (流石に30周は無理だけど、あたしだって今日からテニス部なんだから) (!…無理しちゃ駄目だからね) (はーい!) |