「俺、アンタが好き──」 「え──?」 「付き合ってくんない…?」 あたしの恋は、嵐のようにやってきて、貴方に全てを奪われた。 あたしは青春学園に通う一年生。ごく普通で、取り柄なんてない一般的な女の子。 ただ、テニスが大好きで、同い年なのにレギュラーとして頑張ってる越前リョーマに淡い恋心を抱いてるだけ──…。 そんなの叶うはずもないのに、想い続けて、もう二ヶ月が過ぎただろうか。 相変わらず何のアピールもしないで会話すら一週間に一回あるかないかの始末。 「はあ…、何やってんだろ」 朋チャンや桜乃チャンみたいに話しかけたらいいじゃない。自分から何も出来ないで、恋なんか成就する訳ない。 「香山…?」 「?!」 そんな事を考えながら歩いてたら、後ろから今一番会いたかった人の声がした。否、会ってもどう接していいかわからない人。 「リョーマ君…!」 「何、溜息ついてんの」 「えっ、あ…な、何でもないの」 振り返ったら、案の定、声は彼のモノで、突然のことにどもりながら上手く話すことが出来ない。 「ふーん…、あのさ」 「は、はい肇 「緊張しすぎ」 「へ…?」 「だから、さっきから肩に力はいってる」 リョーマ君はそう言うと、あたしの肩に両手をおいてポンポンと軽く叩いた。や、やばいっ// 「あ、…」 「香山って、男に免疫なさ過ぎなんじゃない?」 そう言われてみれば…、いやちょっと違うのかな?あたしがこうなのは……と心の内で呟いていたら、さっきまで上がっていた自分が嘘のように、ドキドキがおさまった。逆に少し下がったテンションを隠して笑ってみせる。 「…何だかリョーマ君て男の子じゃないみたい」 「何それ…」 「だって、あたし男の子苦手だからさ」 うん、大の苦手になってたんだ。だからあたしが貴方に恋をしてるって本当に不思議。 「だからって俺、男なんだけど?」 「分かってるよ」 凄く複雑そうな顔をするリョーマ君に面食らったあたしは、笑いを堪えられなくて吹き出した。こんな風に男の子の前で吹き出すのはいつぶりだろう。 「…笑えるじゃん」 「え?」 「何でもない…」 ボソッと呟いたリョーマ君の言葉が聞き取れなくて、再度聞き返せば、プイッとそっぽを向かれちゃった。何か可愛い。 それから何となく、二人並んで帰路に着く。今まで緊張してろくに話したこともなかったのに、自然と会話が成り立って、笑い合って帰ることが出来た。 「じゃあ、俺こっちだから」 「うん、また明日」 最後の別れ道で手を振ってリョーマ君とわかれる。何だか寂しいって思えるほど貴方に近づけたような、そんな帰り道。 .... (何か今んなってドキドキがっ//) (あ、お帰りって……姉ちゃん?) |