不安なことがあるなら、抱え込まずに話すこと。それが二人の確かな愛の絆となるから──…
───信じ事
結局昨夜は、リボーンさんの部屋にお泊まりしたあたしと隼人。それにあたしなんかベッドまで貸してもらっちゃって──
「愛」
「!はい…」
まだ寝てるらしい隼人より起きていたあたしに近づいて隣に腰を下ろしたリボーンさん。顔がマジだ…。
「今日は確か京子やハルも来てのパーティーがあっただろ」
「あ、えっと…午後から」
そう、今日は京子さんやハルさんをはじめとしたツナさんの知人を集めての小さなパーティーが開催される。
昨日、確認し忘れてたけどツナさん覚えてるよね?
「京子が来るならチャンスだぞ」
「え?」
「え、じゃねぇぞ。ツナと京子くっつけちまえば何の問題もねぇじゃねぇか」
「あ…」
確かにそうだ。だけどそんな簡単にいくなら今までにだって機会は幾度もあった。
それでも二人の仲は¨友達以上恋人未満¨の関係を保ち続けている。
それに、京子さんはあたしが本当にツナさんの婚約者だと思ってるから、進展も何も期待なんて出来ない。
「シケた面すんな」
「うっ」
頭に乗る心地いい重みに顔を上げると心配してくれているのか、励ましてくれているリボーンさんの手。
ポンポンと軽く頭を撫でてくれたその優しさに自然と頬がゆるむ。
「ありがとうございます」
「フッ、じゃ獄寺起こしたら適当にシャワー浴びて部屋戻れ」
「はい!」
今日はチャンスだからなと念を押してから、リボーンさんは部屋を後にした。そうだよね、折角¨共犯者¨になって訪れたチャンス。無駄になんてできない。
「隼人、起きて」
そうとなれば早く支度しなくちゃと思い、まだ眠っている隼人の体を揺する。
「んー…あと五分」
「ダメ、起きて」
掛かっていた掛け布団にもぐる隼人に掛け布団をまくり上げる。
「っー…何だよ」
「何だよじゃなくて起きてよ」
「…愛」
「ん?」
まだ寝ぼけているのか、ゆっくりとした口調にあたしの頬に伸びてくる手。
「…はよ」
「へ…あ、おはよう」
キスでもされるのかと身構えていたあたしに向けられたのは、優しい笑顔と朝の挨拶。少し拍子抜けしながらおはようと返せば、額に軽く触れる隼人の唇。
「満足か?」
「なっバカ」
あたしの心が読みとれたのか、悪戯っぽい笑みを浮かべた彼にあたしの頬は火照っていく。
でも何だか恥ずかしくなって俯くと、暫くの間、大切そうに隼人の腕の中で抱きしめられていた。
朝から幸せいっぱいっ!←
「リボーンさんに感謝しねぇとな」
「え?」
「朝から一緒にいられんのは誰のおかげだよ」
「あ、うん。そだね」
確かに彼には感謝しなくては…。あたしの場合、いろんな意味でだけどね。
***
俺が寝てる間に交わされたリボーンさんとの話を聞き終わると、愛を膝の上にのせる。
「隼人」
「ん?」
「シャワーどっち先?」
そうした俺を見上げて、そう聞いてきた愛に少し考えを巡らせてから口を開いた。
「一緒に入るか」
「やだ」
「何でだよ」
どんな会話してんだ、と自分でも思いながら膝の上にいる愛を後ろから抱きしめる。
「隼人、最近発情期なんだもん」
何だよそれ。
そりゃ俺だって男だ。好きな女前にして、二人っきりならムラムラするっつーの。
「あー否定しないってことは図星だな」
「それだけ惚れてんだよ、察しろバカ」
「なっ」
結構ストレートに言った言葉に今更ながら照れる俺って、どうなんだ……。
真っ赤になる愛を見て、ほんと可愛い奴と思いながら、抱きしめる力を強めた。
「隼人、痛いっ」
「真っ赤な顔して言ったって、説得力ねぇよ」
「あー、もう!いい加減にしないと怒るからねっ」
「出来るもんならな」
やべ、笑い止まらね。
愛が恥ずかしいからか、必死に放れようともがく姿が愛らしく、その一つ一つの動作に笑みがもれる。
自分がどれだけこいつにベタ惚れしてんのかを痛感する。
「笑うなあっ」
「お前がそんな必死だと、笑うしかねぇだろ」
「分かった分かった、一緒に入るから!」
「話かみ合ってねぇ……」
前にもこんな会話したな、なんて懐かしい事を思い返しながら愛を解放する。俺的に一緒に入れりゃ何でもよかった。べ、別に端っからこれが魂胆で抱きしめてたわけじゃねぇぞ!←
「あ、ねぇ隼人」
「あ?」
シャワーとか言いながら、結局湯船に浸かってる俺と愛。泡風呂とか言って遊んでいた愛がふいに顔を上げた。
「昨日の夜の事、ツナさん責めちゃダメだからね?」
「!──…何だよ急に」
泡をすくっては返してを繰り返す愛は、少し伏せ目がちにそう口にした。責めるなって、別に責めちゃいねぇけど、お前が何でそんなこと言うんだよ。
「あたし、ツナさんと隼人みたいな上司と部下の関係に憧れてた」
「は?」
何か話それてんぞ
「だからその関係だけは壊さないでほしいの、どんな状況下でもあたしを信じて」
「愛…」
「あたしの一番好きな人が隼人だってことを忘れないで」
俺を見上げる愛の真剣な瞳に、心なしか十年前のリング争奪戦時、初めて俺に声を荒げた十代目の力強さとだぶって見えた。
愛に言われるまでもなく、俺の一生かけてついて行くと誓った十代目との関係を壊すつもりはない。
もちろん愛と想い合ってる愛も本物だってことも分かってる。こいつを信じれなくなるわけねぇんだ。
「当たり前だろ」
気づいたらそう口走って、そのまま愛を抱き寄せていた。俺は愛を守って、十代目を支える右腕だ。この歯車を狂わしたりなんかしねぇから。
「俺だってお前を愛してる事、忘れんじゃねぇぞ」
「うんっ」
***
「はあ、」
遅いと思って呼びにくりゃ、何だこいつら。確かにシャワー浴びろとは言ったぞ、だがな、誰も一緒に入ってベタベタしろなんて言ってねぇ(苛
俺は愛銃を天井に向けて、一発発砲する。
「「?!」」
「早くしろ」
そう一言残すと部屋から出て、部下に誰も近づかないようにと見張りを任せた。ったく、世話の焼けるガキ共だな。
そう言いながらも口元に笑みを浮かべているリボーンは、少し安堵していた。
昨夜の出来事は二人にとって、小さな事にすぎないんだと、恋の障害にならないほどまでに互いを愛しているのだと分かったからだろう。
だが、獄寺が壊さないと約束したツナとの関係は脆くも崩れ落ちようとしていた。
....
(今のリボーンさんだよね…?)
(あがるか…)
(うん…) |