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第1夜 隠し事『内緒の恋仲』
満ちかけた月が照らし出すのは、血濡れたあたし───…















───し事


















バンッ────!
勢いよく開けた扉から飛び込んだあたしは、その部屋の主である大好きな彼にそのまま抱きついた。


「ただいまぁ!」


「!……、吃驚させんなよ」


「ごめんごめん」


文句を言いながらも抱きしめ返して頭を撫でてくれる彼に身を預ける。


「随分と急じゃねぇか、何かあったのか?」


少し心配した声色で問うてくる彼にあたしは首を振って違うよ、とだけ呟いた。


「じゃあ、何だよ」


「任務帰り。隼人に会いたくなったから…」


「あ?」


あたしがそう言って微笑んだら頭を撫でていた隼人の手が止まり、目を見開いた。


それもそのはず。任務帰りならどんな事情があろうとも帰還したことを第一に知らせるのはボンゴレ十代目ボスである沢田綱吉だ。


「今すぐ十代目んとこ行ってこい!」


慌てたようにそう言う隼人に、あたしはしがみついたまま離れない。だって離れたくないし。


「大丈夫だよ、ツナさん優しいから」


「そういう問題じゃねぇよ。仮にも婚約者だろーが…」


さっきの表情とは打って変わった隼人の表情は少し歪んでいるように思う。


そう、あたしは¨仮¨ではあるがツナさんの身を守るため。時には身を犠牲にしてまで任務をこなしたり誘拐されたりと今までたくさんの修羅場を潜り抜けてきた彼の¨婚約者¨


いざ本当にツナさんが心から愛する女性に巡り会ったときにその人に危害がいかないようにとの身代わり。


だからマフィア界ではあたしはツナさんの正式な婚約者として発表されてる。


「ごめん、ね…」


「…」


「こんな形でしか隼人に会えないなんて…」


「……仕方ねぇだろ」


あたしとツナさんの上司と部下という関係を知っているのは守護者の皆と、リボーンさんだけだ。


そして、あたしと隼人が愛し合っている内緒の¨恋人同士¨だって知ってるのはあたし達だけ。皆に隠して付き合いだしてからもう半年近くなる。


「…もう遅いし、明日報告書だしに行くよ」


あたしはそう言って立ち上がると隼人の頬に軽いキスを落とす。


「おやすみ」


「…」


いつもなら反応してああ、とかじゃあな、とか言ってくれるのに無反応のままじっとあたしを見つめてくる隼人。


え?どうしちゃったの?返事してくれないとあたし自分の部屋戻れないんだけど…。


暫く隼人同様に見つめ返していたらスッとあたしの頬に隼人の手が触れた。


「隼、人?」


いつもの彼とどこか違うような感じがして、小首を傾げたらそのまま近づいてくる隼人の顔。


「ん、…」


軽く触れた唇にドキドキと胸が高鳴った。キスなんて、凄く久しぶりな気がする。


「悪い…」


「う、ううん…」


唇が離れたかと思えばギュッと抱きしめられた。


「…泊まってけよ」


「え?」


「今から帰ったら危ねぇから泊まってけって言ってんだよ」


「あ、はい…」


はいってあたし何言ってんだ
しかも、危ないってあたしの部・屋直ぐそこなんですけど!←


隼人君今日はすこぶるおかしいですよ!←



***

結局隼人に泊まってけと言われたあたしは血生臭い、その臭いを取りたくてシャワーを借りる。


毎度のことながら任務帰りのこの何とも言えない臭いや、頭に残って消えない殺しの鮮明な映像が気持ち悪い。


ツナさんは極力あたしに殺しの任務は回さないけど、今日は見事にその任務がぶつかった。


キュ、キュッ─────
シャワーの蛇口をしめて備え付けのバスタオルで体をくるみ、タオルで髪を拭く。


「愛」


「ん、ありがと」


そんな中、普通に交わされる会話…女の子なら普通照れるよ。だって服着てなくてバスタオル一枚なんだから…。そこで入ってくる隼人も隼人だけど…。


「つか、お前少しは恥ずかしがるとかねぇのかよ」


「だって裸な訳じゃないし?」


「最後の疑問符は何だ」


「ん、まあ隼人だからだよ」


「話かみ合ってねぇ…」


これもいつもの事。当初はお互いに照れてこんな事になるなんて思いもしなかった。


「いつまでいるのよ…」


「恥ずかしくねぇんだろ?」


まるで悪戯をして相手の反応を楽しむ子供みたいに、ニッと笑う隼人にやられたと思う。


「き、着替えられないっ」


「…何で」


「ちょ、は、隼人!」


いきなり後ろから包みこむように抱きしめてきた隼人に、彼から借りた服が下に落ちる。


「何赤くなってんだよ」


「ち、近いってば!」


いつもは逆なのにッ。何で今日はこんなにあたしが追いつめられてんの!


「愛…」


「ん、…ダメっ」


名前を囁かれたかと思えばそっと首筋に触れた唇。温かくて、身を預けたくなるけどそんな事したら明日起きれないんだって!


「無理…」


「っあ…」


結局、あたしの抵抗は虚しくバスタオルは借りた服同様、床に落ちた。
















「隼人のバカ!」


「冷てっ!おい、それ水!」


「分かってるわよ!」


さっきあのままベッド行きになってしまった事からあたしは怒りというかさっきの仕返しをしていた。


「明日、ツナさんと一日一緒にいなきゃなんないんだからね!」


これ、どうすんのよ!と続けて首筋に目立つキスマークを指さした。


「し、知るか」


「今更照れたって許してあげないから!」


そう言えば誰が!と返ってきて余計に赤くなる隼人。そんな可愛い反応しても今日は許してやらない!


それから隼人とあたしの口喧嘩と、あたしの仕返しは広いお風呂の中で続いた。


この時はまだ、こんな日々がずっと続くって思ってた…。これからもこの関係は変わらないものだと信じていたの。


明るく照らす月だけが全てを知っている。



....
(くしゅっ)
(風呂で暴れっからじゃねぇか)
(隼人のせいじゃん!)




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