02 side.甲斐井
あれは!?転校生!
丁度窓際、射し込む光によって黒い綺麗な髪が少し茶色に染まってキラキラして見える
僅かに侵入してくる風によって髪が揺れると
その風によって広がってくる甘い香り
花の蜜に誘われる蜜蜂のように近づくと、無意識にその柔らかい髪に触れていた
ふわ
あ、柔らかい…
「ん・・・・・」
え?
深く閉じられた瞼がピクリと動くのが分かった
やばい!
そう思った時には遅く、いつもは眼鏡で隠れているであろう長い睫毛と大きな綺麗な瞳が開かれていて僕の事を見つめていた
ドキンっ…!
胸の高鳴りがやけにうるさい
目が…離せない
僕は撫でてしまっていた手を咄嗟に引き上げると
「ち、違うんだ!寝込みとか狙ったわけじゃなくて!そのっ!」
聞かれてもいない言い訳をしていた
「甲斐井くん?」
ふと、透き通る可愛らしい声が僕の名を呼んだ
「は、はい!…
…て…あれ?何で僕の名前…」
なんで僕の名前を知っているんだろう?
昨日転校して来たばかりなのにこんな目立たない僕の事…
転校生ははっとした様子で目を泳がせると
「あっ、ごめん、そ、の…甲斐井くんのこと、気になってた…から?」
そう首を傾げると、顔を赤らめながら僕に、笑いかけたんだ…
かわええ…。可愛すぎるよ…。すみれちゃん!!!
そう、今までの話は恋愛シミュレーションゲーム【華の学園で恋しよっ!】のすみれちゃんとの出会いであった。冴えない主人公が花の名前が付いた女の子達と甘いあま〜い学園生活をするという内容だ
僕が朝早くに来る理由…それは
誰もいない教室でゲームをし、よりリアルに楽しみ、妄想力を働かすためであった
それにしてもこのシチュは!!
すみれちゃんではないか!!!
いや、しかし、
すみれちゃんルートは良かった〜!
転校生の眼鏡っ娘すみれちゃん
いつもは大人しいのに、付き合っていくうちに積極的かつ大胆になる所が魅力的
あれで、好き…って言われたら、僕は……
僕はぁぁぁあぁぁぁあ!!
「ん……」
…あ、でもいくらこのシチュエーションが似てるからって、こいつはすみれちゃんではなくて、むしろ女の子でもなくて、男、だな……
転校生の声で現実に引き戻された、僕は冷静さを取り戻した
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