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02

ギュッ

























あれ?…
反射的に閉じていた目をゆっくり開け、耳も解放する


話し声は近いが、自分に向けられてはいない?
自分の所ではなく、隣の物置が開けられている様だった

カタッとその物置から何かを取り出した音が聞こえる

暫くすると

「和泉さまぁ」

甘えた声を出す男の子

「ん〜、あ〜」

今までその男の子の存在を忘れていたかのような返事の仕方をする

「んー、もう、君、いーや。
俺萎えちゃったしー」

じゃーねーと言うとフラフラと背中越しに手を振る

男の子はショックをうけたようだったがまだ粘る

「けど、やっと和泉様が僕の誘いに乗って頂けたのに、僕…続き…したいです」

上目遣いで股をモジモジさせながら言った

しかし、

「だめぇ〜、あんまりしつこいとキレるよ〜?」
ニコニコしているのに、威圧感がある

それにー…と男が呟くと

ミャ〜、
と可愛らしい声が教室に響く


ねこ?


どうやら、子猫が空いていた窓から侵入し、誤って物置に閉じ込められていて、その子が音を発したようだ

これはかなり助かりました。今度子猫さんにお礼をしなくては。あ、顔…

子猫の顔を覚えようと、逸らしていた目線を元に戻す

そこには男に抱えられ、真っ黒な容姿に身を包んだ、ブルーアイで、耳の毛が少し長めのまだ小さい子猫がいた

かなり美人さんだ。こんな状況にも関わらず、思わず和んでしまう。

「俺、いまー、子猫と戯れたいしー、君はまた今度遊んであげるー」にこっ

どっから目線なんだこいつ。あの行為はかなりいけないけど、男の子放ったらかしは少しかわいそうですね。きっと、あの、声色からしては泣いて…え?

きっと怒るか、泣くかだと思っていたので、男の子の表情を伺うと、

ぽわんとした顔をし、

釣れない和泉様もいい…と呟いていた

もうなんでもいいんじゃないですか。勝手に世話を焼いてしまいましたね。しかしもう早くここからでないと、さすがにやばいですね。

…はぁ、兄さん、この学園でやっていけるか本当に心配です…












一方その頃……
風間ノ宮高校生徒会室では、会議が行われていた

各委員長の話を、ひときわ目の引く人物が真ん中の席に座り、聞いていた

しかし、その人物は人前では笑わず無愛想で何を考えているか分からないとかなりミステリアスな存在だった。だがその雰囲気がまた色気を放っている。

朱里……。会議中にも関わらず、その人物は違うことを考える

新しい学園で泣いてはいないだろうか。転んでケガとか…。意外とそそっかしいからな。だかそこがまた可愛らしい。ふっ

そんな事を考えていると、思わず顔が綻ぶ

そんな表情を見せた人物に周りは見惚れてしまう

すると、バシッと誰かに頭を叩かれた
「何をする。」低い声で黒いオーラを放ち、叩いた本人を見る。朱里の事を考えている時に邪魔をされたので、かなり不機嫌だ

「こっちのセリフだ!お前また弟の事考えてただろ!確かに可愛いけどな!」

その人物は怒鳴るとまったくと言う様に自分の腰に手おき、呆れていた

「朱里を変な目で見るな。
そして、分かっているなら邪魔をするな。」

ただでさえ朱里が足りないのに、俺の至福のひと時を邪魔するんじゃない。イライラする。

「お前が1番変な目で見てるだろ!まったく、お前は会長なんだぞ?しっかりしてくれ!弟くんの事は会議が終わってからたくさん考えればいいだろ?」

俺に指図するこいつ。副会長の新垣だ。
こいつにはよくつっこまれる。何故かは知らんが。

ピクッ…

「…今日の会議はここまで。」

「は?」

突然のことに新垣は言葉を発し、皆も言葉にはしないが同じ反応だった

「今日の会議は終了だ。全て了解した。詳しく話したい奴は個人的に俺の所に来るといい。今日は解散。」

ばーっと急いだ様に告げると、ぽかんとしている全員を無視し、足早にその場を後にした











コツコツコツコツ……
廊下に響く足音……
その足音がピタッと止まる

『兄さん…』

今さっきすごく可愛く朱里が俺のことを呼んだ気がした…

呼んでいないとしても、何か良からぬ事に巻き込まれている気がする…

難しい顔をして、暫く何かを考えると、何かを思いついた様に微笑んだ

待っていろ。朱里。

再び歩みを始める
コツコツ……
と、また、廊下に足音が響いた








ぶるっ


…うー、急に寒気が…まだ暑い季節のはずなのに…

自分自身を抱え込むようにすると、腕を摩る

この状況だからですかね…早く脱出しなければ…





気持ち悪いほど朱里へのセンサーが働いている兄が何かを企んでいることはまだ朱里は知らない





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あきゅろす。
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