07
無表情同士が、見つめ合う
無表情だが湘里の目は愛しそうに朱里を見つめていた
…………
しばらくの沈黙
「あの……」
「ん?なんだ。」
優しく答えながら、頬に添えていた手の親指で目元をスリっと一撫ですると、くすぐったかったので片目を閉じてしまう
そんな反応を見て、クスリと満足そうに笑う湘里
ホワンホワンと穏やかな光景が流れる中…
再度、口を開こうとした瞬間
ガタッッッ
タッタッタッタッ
ぎゅむーーーー
「だめ!朱里が1番好きなのはパパだよ」
威嚇するように湘里を見上げ、ねー?と顔を覗き込まれ優しく問いかける父、有兎
「いくら湘里でも、あんな新婚さんみたいな空気を出すことは許さないよ、朱里をお嫁さんになんかやるもんかー!」と言ってさらにぎゅーっと腕に力が込められる
すると、どんどん朱里の顔が俯いていく
そんな朱里にはまだ気付かない二人は言い争う
「さっきまで、母さんとベタベタして朱里を放っておいた人に、とやかく言われたくない。」
先ほどまで灯っていた朱里に対する目ではなく、いつもの感情の感じられない顔に戻っていた湘里が言い返す
「あれは、習慣のようなものなんだ
あれをやらなきゃ、1日が始まった感じがしないんだよ。その後でいっぱい朱里を愛でようと思っていたのにー」
「朱里は俺がたくさん甘やかすから、父さんは母さんとベタベタしといてよ。朱里のいない所で。」
「それがダメだと言ってるんだ、朱里はパパが甘やかす」
俺が。
パパが
俺が。
パパが
そんな終わりない言い争いをニコニコして見守っていた母、真智があることに気づく
「あら、朱里ちゃん、どーしたの?」
俯いていて顔はよく見えないが、明らかに黒いオーラを放っている朱里の姿があった
真智にはそれは見えなかったが、先ほどまで朱里にとってはくだらなく、どーでもいいことを言い争っていた二人には感じとれ、ピリっとした空気がそこに流れ込んだ
そんな沈黙の流れる中…無機質な声が響き渡る
「後であなた達2人は、お仕置き、ですよ?俺の至福のひとときをこんなに邪魔して…良いとでも思ってました?…」
黒いオーラを保ったまま、笑っているけど、笑っていない笑顔で問いかける
「「ごめんなさい。」」
謝るしか助かる道は無いと判断した2人でした
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