05
はぁ、とため息を一つ
「30秒で支度して下さい、さもないと、もっと嫌いになります」
やっと兄の腕から逃れられて、少し崩れてしまった身なりを整えながら兄に言い放つ
するとガバッと上半身だけ勢いよくあげ、何故かびっくりしたような顔で俺を見た
「もっと…?朱里、聞き捨てならんな」
タッっと床に両足をついてベッドの上からようやく立つと、制服を整え終え、ネクタイを調節している朱里の前まで歩いて行くと、スッと大きな腕で朱里のことをすっぽりと包み込む
「俺は朱里が好きだ、朱里に嫌いになられては困る。それに、さっきの言葉、もっととは今現在進行形で俺のことが嫌いということか?」
俺の頭の上で淡々と語る湘里は、少し、いやかなり焦っているように聞こえる
そんな兄に対し、
ネクタイを調節していて急に抱きしめられたため、湘里の胸のあたりでコンパクトに折りたたまれた腕は身動きが出来ない
逃げ出すことを諦め湘里のパジャマをぎゅっと手でにぎり、おでこをコツンと逞しい胸に預けると
「…早く支度をしてくれれば……好きです」
早く朝食を食べたくて諦めたように言う朱里だったが、湘里の目には自分に身を委ね、必死に羞恥心を隠し、一生懸命自分に告白している朱里にしか見えない、ある意味見えていない湘里
そんな美化された朱里に対して、、、、
ドキューーーン
湘里の何かが撃ち抜かれた
その衝撃により後ろへふらふらとよろめく
湘里は鼻を抑えながら
「わ、分かった。20秒で支度してやる」
出来るのなら始めからからやってほしものですと、悶える兄を放っておき部屋からさっさと出て行く朱里
本命の朝食がやっと食べられる事に顔を綻ばせながらリビングへ向かう弟を見て、更に悶える兄であった
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