平和主義への勇気(学園)
反平和主義の暴動続編
「ん゛…‥、」
何時間、寝ただろうか。あるいは、何日。
精神的苦痛は寝ていてもなお疲労を増幅させるのだと気付いた。
否、寝すぎて疲れただけか。そろそろ俺の脳ミソも溶けてなくなるに違いない。
「…今…何時、だ…?」
「5時35分」
「………………、?」
薄暗くて肌寒い朝だった。確かに俺は、記憶が正しければおそらく、眠りにつく前までは1人であった。
それならばなぜ。独りの空間で会話が成り立つなど、有り得ないというのに。
「ったく…いつまで拗ねてんのかと思えば真っ青な顔して寝込んでるしよ、」
「え、え、‥まさ、む、ね?」
「Ya.…‥アンタ3日間ずっと寝てた」
なんで。どうして。
君は俺に愛想を尽かして、例の可愛い女子と清らかな交際をスタートさせていたはずで。
だから俺はドン底まで落ちて底辺のまだ奥も見て、…多分このままミイラにでもなる予定だった。
「随分痩せたな…飯食ってねぇんだろ」
「がっこ、は…?」
「それは今お前が心配することじゃねぇ」
どこも切ってないだろうな、とでも言うように入念なボディチェックを受ける。
俺はといえば、未だに状況が把握できなくて目線を泳がせるしかない。
「…元親さ、甘えてたろ、俺に」
「は、」
「どうせ俺から謝るからほっとけとか、俺は元親をフッたりできねぇから大丈夫とか、思ってたろ」
「……………」
ほらみろ、俺ってば完璧に図星だから、ぐぅの言葉も出ない。
「喧嘩の内容なんて問題じゃねぇんだよ、俺なんでお前と喧嘩したとか覚えてねぇし」
うん、俺も覚えてねぇわ。
「どっちが悪いとか、喧嘩って時点でどっちも悪いだろ。俺は、自分から謝ることに腹が立ってんじゃねぇ。それに甘えたアンタが、悪びれもなく平気な顔してやがるから腹が立ったんだ」
「……………………っ、」
時折。時折だ。政宗が、俺よりも遥かに大人に見える時がある。
普段は好きなことしか頭にないような自由人なのに、モラルやマナーがなってないヤツが大嫌いだったり。
「だから今回は、元親が謝るまで絶対に許さねぇって思った。…でもよ、時間が経てば経つほど、謝り難くなっただろ?」
「う゛ん…っ、」
枯れたと思った涙は再び湧き水のごとく溢れ出し、俺の背中を撫でる政宗の肩を濡らした。
(…結局、素直じゃないのは俺だけだったんだ…)
政宗は、いつだって待っていた。俺が勇気を出して自ら謝るのを。
似た者同士だなんて、笑ったのは誰だ。まったく正反対ではないか。(俺の、ばか。)
「ま、ざむね゛…、」
「…ん?」
「ごめ、なさ…!!」
「分かってる、俺も悪かった…。つい意地になっちまって、アンタが感受性豊かなの忘れてたからよ」
死んでんじゃねぇかって、来てみて良かった。
「本当にギリギリだったもんな。こんなクソみてぇな喧嘩で元親が死んだら仲直りどころじゃなかったし」
「っ、ひ‥、!」
「あーだからもう泣くなって!美人が台無しだろ?」
ポンポンとあやすように抱き締められて、政宗の包容力を改めて実感した。
なぁ、たまに酷く不安になるよ。いつか君が、俺を置いて消えてしまうんじゃないかって。
その綺麗な手が、声が、瞳が。俺じゃない誰かを愛でることに、悲しいかな嫉妬してしまうんだよ。
「俺、こと…っ、嫌い‥、ならな、っで‥!」
「誰が嫌うかよバーカ。死ぬまで愛してやるから安心しろ」
…その前に、朝飯、な?
ぐーぐーと無遠慮に鳴り響く腹の虫は、多分俺が飼ってるやつ。(しばらくなにも食べてないし。)
政宗と仲直りした途端に戻ってくるなんて、気紛れもいい加減にしてくれ!
ごめんなさいの勇気で得手した平和は、朝飯の匂いを連れて俺の心をノックする
(大切なのは、損得を考えずに譲り合う心です)
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言ってみれば大きな喧嘩が戦争だものね。続編とは言ったものの大幅に脱線。有り難いことにリクエストがあったから書きましたが、アレだな。相変わらず。
ちなみに可愛いこちゃんと政宗様がカラオケに行ったのは単純に遊び友達として、です。
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