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Dear me, From me
6
 こんな状態が続いたある日のことだった。
「また雨かよ・・・。」
一人の男子生徒がそうぼやいた。数日前から梅雨前線が到達し、この地域にも梅雨がやってきた。重く垂れ込めた雨雲は途切れることを知らず、校庭に引かれた白線を洗い流していた。
 放課後、雨の降りしきる中を一人トボトボと歩く小さな影。秀也は一人家路を辿っていた。鉛色の空は少年の背中をいっそう淋しく見せ、一人ぼっちの彼を誰もいない孤独な空間に押し込めているかのようだった。
 ふと、どこからか音が聞こえた。
「何だろう?」
雨音に掻き消えそうなか細い音だった。それでも、秀也にははっきりと聞こえた。秀也は辺りを見回し、音の正体を見極めようとした。すると、目の端に映ったのは、小さな茶色の塊。再び聞こえた音。先程の音はどうやらここから発されていたようだ。

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あきゅろす。
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