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Dear me, From me
5
 「秀也、学校はどう?楽しい?」
「・・・普通だよ。」
母親の質問に秀也は簡単に答える。この日の夕飯は人参たっぷりのカレーだ。
(また人参・・・。)
秀也はこの人参という物体を天敵としていた。独特の青臭さがどうにも好きになれないのだ。
「何かないの?お友達とこういうことをして遊んだ、とか。」
「ないよ。」
秀也は目の前の憎らしい橙色を持て余していた。
 このやり取りももう何回目だろうか。秀也は毎日同じような質問にいいかげんうんざりしていた。
 転校して来てからというもの、食卓での第一声はいつもこんな具合だった。秀也の父親は仕事が忙しく、平日は夜遅くに帰ってくることがほとんどで、それ故、食卓は大体が母親と二人きり。母親としては学校の様子を聞きたいと思うのはごく当然のことだ。しかし、それでも秀也にとっては目の前の人参でしかない。いや、この話題をやめてくれるのなら目の前の忌ま忌ましい塊を綺麗に平らげることもできる、とさえ思っていた。

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