Dear me, From me 3 秀也の家庭はごくごく普通のサラリーマン家庭であった。秀也が小学校低学年の頃、父親の転勤でこの街に引っ越してきたのだった。 そして秀也は近所の小学校に転校することになった。 「今日から一緒にお勉強する高倉秀也君です。みんな仲良くしてあげてね。」 担任が他の児童に秀也を紹介すると、生徒たちは一斉に珍しいものを見るかのような好奇心いっぱいの視線を注ぐ。同時に生徒たちはざわめき立つ。一方、当の本人は黙って下を向くばかりだった。秀也は自分に視線が一気に集中するこの状況から一刻も早く逃げ出したかった。 担任に指定されて席につくとあっという間に周りを囲まれ質問攻めに遭う。注目なんてされたくもないと思うのとは裏腹に秀也の周りには人だかりと口々に質問を投げかけてくる子供達。本人達に悪気はないのだろうが、好奇の目が向けられるのは秀也にしてみれば拷問に近いとさえ思えた。 (早く家に帰りたい。何で僕に注目するの?僕のことなんかきいたって面白くないのに。) 秀也はただひたすらに授業の時間が早く始まることを祈っていた。 [*前へ][次へ#] |