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Dear me, From me
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 「さて、と。荷物はこれで全部か。」
一人の青年が腰に手を当てて呟いた。目の前には積み上げられた段ボールの山。窓からは柔らかな日差しが青年の顔を照らす。キャラメル色の透き通った細い線がキラキラと春風になびいて青年の顔をくすぐった。。
 青年の名は高倉秀也。この春から大学生になる。念願だった志望校に合格し、親元を離れて一人暮らしをすることになる。
「この部屋とももうお別れか。狭いとか文句ばかり言ってきたけど、いざ離れるとなると、何となく感慨深いものがあるな。」
そう言って空っぽになった部屋をぐるりと見回す。ところどころ日に焼けた壁が彼との年月を物語っている。半ば物置と化していた学習机も今や買った当時の木目そのままを陽光の下にさらしている。
 別れを惜しむように暫く部屋を眺めていると。

ひらり。

一枚の紙切れが風に舞い、落ちた。

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あきゅろす。
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