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Hollow Fung
7
 暫くすると、どうやら山道に差し掛かったらしく、先程までの規則的なカタカタという音が不規則でいびつなざらつきを帯びていた。それに混じって木葉の擦れる音も聞こえてくる。さらには微かにだが、鳥の囀りも聞こえてきた。見たことなど一度もないはずなのに、何故か距離感まで手にとるように感じられる。初めて耳にする、命の息吹。無音の世界から飛び込んできた私には少々やかましく感じられもする。街道を通ったときの喧騒よりは幾分マシではあるが。どうやら、聴覚はかなり冴えているらしい。今まで色も音もほとんどない世界にいたから気付かなかった。色のない世界にいると聴覚が視覚を補おうとでもするのだろうか。
 ふと、木葉の擦れる音とも動物の音とも異質なものが耳に飛び込んできた。

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あきゅろす。
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