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Hollow Fung
6
 行き先を告げられることなく、馬車は動き出した。彼等は私をどこへ何のために連れ出そうとするのだろうか。あの男が命を受けた「旦那様」とはいかなる人物なのか。男の様子では強引に侵入したり、こっそり入ったり、ということではないはずだ。そうだとすれば、少なくとも私と無関係な人物ではないだろう。そうだとしても、そいつが私といかなる関係を持つ者なのか。閉じられた空間の中、一人そんな疑問を弄びながら周囲を目だけで眺めた。
 先程乗ったときに気付いたが、この馬車には窓がついていない。ガレージに連れられたときも目に映っていたのはコンクリートの壁ばかりだったし、ガレージ自体も然り。どうやら彼等は余程私に外を見せたくないらしい。そこにどのような意図が潜むのか。何も知らされぬまま連れられ、何が起こるのかも伝わらぬまま彼等の成すがままに流されるのだろう。私の意思はそこには介在し得ない。もっとも、端からそんな意思など存在すらしていないのだから、どちらにせよ結果は変わらないのだろうが。

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あきゅろす。
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