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Hollow Fung
3
 書物だけではない。与えられる食事や衣服もまた然り。一目で見てわかるほど上等なものを使っている。ここに留まらせるせめてもの償いのつもりか、はたまたここから出さないための飴か。あるいは、どちらでもない、別の理由か。いずれにせよ、彼等が私に何の関心も寄せていないことは明らかだし、こちらも彼等には関心がない。どんな理由でここにいて何故ここから出られない、出ようともしないのか、考えたこともない。
 いつもの通りにページをめくる擦れた音が響く。分厚い本に豪華な装丁。おそらくもとはかなり質が良かったのだろう。年季は入っているが、立派なのには変わりない。他の本も同様だ。膨大な蔵書の全てがやたらと質の高いものだ。いくらこの部屋以外を知らないと言えど、それくらいは直感でわかる。
 書物だけではない。与えられる食事や衣服もまた然り。一目で見てわかるほど上等なものを使っている。ここに留まらせるせめてもの償いのつもりか、はたまたここから出さないための飴か。あるいは、どちらでもない、別の理由か。いずれにせよ、彼等が私に何の関心も寄せていないことは明らかだし、こちらも彼等には関心がない。どんな理由でここにいて何故ここから出られない、出ようともしないのか、考えたこともない。
 そうして、日付の変わる頃に眠りにつく。定刻に、寸分違う事なく。予めプログラムされた人形のように。そのことに嫌悪も疑問も抱く事なく、また日々を消費していく。私にとって生きることは淡々とその日の行程をこなすことにすぎない。そういう意味では、私の世話をしにやってくる使用人と何ら変わりはないのかも知れない。無表情に自らの責務をこなすだけの「人形」達と。

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