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Hollow Fung
1
 「何故肉食動物に牙があるかわかるか?」
色あせた記憶。セピア色の景色、積み上げられた古い本。目の前に座る男。いつのことかも分からぬほど古ぼけたそいつの中に、ただ一つだけ鮮明に残ったもの。知らないと答えれば
「それは奴らが弱いからだ。脆弱であるからこそ牙をもって対抗しているのだ。」
という返答。誰が、何故、そんなことを言ったのかもわからないというのに、このやり取りだけは脳に焼き付いている。


Hollow Fung


 ゆるりと目を開けると目の前にはコンクリートの天井があった。無機質で何の感情も呼び寄せないひどく冷たい物質。もう見慣れてしまったそれに何の感情も抱かない目が走る。
 ゆっくりと体を起こすと、それに合わせて毛布が滑り落ちた。目の前に広がる景色はさっきと同じものだ。申し訳程度についた明かりとり用の窓から光が差し込んでいる。もう日が高くなっている頃だろうか。
 私はこの冷たく暗い箱以外の世界を知らない。実際は知らないわけではないのかも知れないが、記憶にないのだから同じことだろう。ただ一つ、あの記憶を除いては。

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あきゅろす。
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