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うさんくさい

朝からお姫様抱っこなんて人生初めての経験をして、ユーリはかっこいいから余計に緊張してしまって、重くないか聞いたら「もっと太ってもいいんじゃねぇの?」と、二の腕辺りを触られた。

「やっ!!ユユユーリの変態…!!」
「二の腕触るくらい、いいだろ。胸触った訳じゃねぇんだから」
「……っ!?」
「…お前初だよな」

恥ずかしくなって顔を両手で覆うように隠せば、ユーリが笑ったのが分かった。

「ほらよっと」
「あ、ありがとう」

下駄箱についてここからは自分で歩くから、とユーリに降ろしてもらった。
靴を脱いで痛くないほうの足だけ、まだ真新しい上履きを履く。片方の上履きとバッグを持ってとりあえず保健室へ向かえば、ユーリも黙ってついてきた。

「教室行ってていいのに…」
「ちょっと確認したいことあってな」
「かくにん…?」

首を傾げたところでガラリとユーリが保健室のドアを開ける。保健室独特の薬品の匂いがする部屋に足を踏み入れた。
そこには白衣を着たうさんくささを全開に漂わせた先生がいて、

「し、失礼します」
「やっぱり、おさっんもかよ」
「あら青年じゃないの。まぁご覧の通りまたしばらくよろしく頼むわ」
「そりゃ迷惑なお願いだな」
「ちょ、ちょっとユーリ…?」

お互い話が通じるところ以前からの知り合いなのかも知れない。ユーリが確信したいことってこの事だったのかな、と頭の隅で思う。

「アイリ、早く足診てもらえよ。一応それくらい出来るだろおっさん」
「一応ってなによ、一応って。んじゃとりあえずここ座ってちょうだい」
「あ、はい。」

言われて丸い椅子に腰を下ろす。近くの椅子にユーリが座った。

「このおっさんなシュヴァーンの弟」
「えっ!?そうなんだ!!あ、だからさっき」
「そう、兄弟で教師やってんだ。おっさんは保険医だけどな」

おぉー。思わず声が漏れる。兄弟で教師ってすごいことなんじゃないかこれ、

「そうそう。青年は中学でしょっちゅう怪我して保健室きたわよねぇ。」
「…え?」
「おい、おっさん。余計なこと言うなよ、」
「へぇ、そうなんだ…ユーリやんちゃだったんだね!!」
「…まぁ、な」

ユーリがすごく微妙な顔したけど、そのまま何も言わずに終わる。

「んじゃちょっと失礼するわよ」
「あ、はい。あ、そういえば先生の名前は?」
「あぁ、レイヴンっていうのよ。アイリちゃんならいつでも歓迎だから。あ、なんならベッド使ってく?」

指でレイヴン先生がベッドを指した途端、ユーリが先生の頭を目にも見えないスピードで殴る。
あぁぁあ!!あれは、あれは痛いよユーリ!!

「ちょっと青年!!なにすんのよ!!」
「下心丸見えだおっさん。アイリに手出したらただじゃおかねーからな」

ぼそり、ユーリが先生の耳元で何か呟いたみたいだったけど、生憎聞こえないままユーリは椅子に戻る。

「(あー、そういうことねー)」

手を止めずに包帯を巻き続けてくれてるけど、あ、うぁ…!!
先生の頭たんこぶ出来てます…!!せ、先生…!!

「心配すんなって、おっさんは不死身だ」

何故か自慢気に話すユーリに対し、レイヴン先生はニヤニヤしながらやたらと頷いている。
あ、あれ…?もしかして先生、え、む…?

「へぇー、あの青年がねぇ…。」
「あ…?なんだよどうした、いつもの事だが変だぞおっさん」

「(本人に自覚なし、ねぇ…。)」

ユーリとレイヴン先生は以外に仲良しなんだなぁ…。
ユーリの事をまたひとつ知れたことになんだか嬉しくなっているとチャイムが鳴った

「ユーリ、急がないとっ…!!」
「おう、んじゃまたな、おっさん」

「じゃぁね青年。アイリちゃんも、」

急いで保健室を出ると後ろから「遅れるとうちの兄ちゃん怖いわよー」と暢気なレイヴン先生の声が聞こえてきた
先生、それはチャイムが鳴る前に言ってほしかったです…!!

怪我した足を庇いながら向かった教室で、キツい説教がまっているのはまた別のお話



先生との出会い



「(ユーリ、君の遅刻癖はいつになったら直るんだい?)」
「(違うのっ!!フレン聞いて、あのね私が怪我をしたのをユーリが保健室まで連れて行ってくれたの)」
「(まぁもともと遅刻する気では居たぜ)」
「(それを言っちゃうかなぁ…!!)」


「(とりあえずお前ら、職員室に来い)」
「(ユーリ、わたし生きて帰れるかな)」
「(大丈夫だ、骨くらいは拾ってやる)」
「(それ全然大丈夫じゃないよね…!!)」


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まさかのレイヴン先生登場
愛してるぜぇ…!!



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あきゅろす。
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