あれから、プチ脳内パニックを起こしている間、入学式はあれよあれよという間に終わってしまった。
お母さんに注意されたばかりで、その通りになってしまったのは悔しかったけれど、仕方ない、あ、あれはお母さんも悪いんだ…!!
とにかく、入学式が終わって各クラスに別れて教室に入ったまではよかった。よかったのだけど、問題はそこからで、例の黒髪美少年(勝手に命名)が、隣に居たのだから、私の普段からフル活動している心臓はオーバーヒート状態な訳だ。
ガラリ
ドアが開いて入ってきたのは、スーツを着こなした、俗に言うイケメンで、クラスから、きゃ―だの、かっこいい―だの、黄色い声が上がった。
「私はこのクラスの担任をすることになった、シュヴァーン・オルトレインだ。好きに呼んでくれて構わない。」
担任と聞いてか、更に大きくなる黄色い声。女子ってすごい、かっこいい人みたり、好きな人ができたりすると、すごい興奮するもんね。
ほけ―っと担任なったシュヴァーン先生を眺めていたときだ。
「お―い、フレン」
突然黒髪美少年が声をかけた。
「なんだい、ユーリ」
返した声が隣からするもんだから、ちらり、視線を動かしてみて、そしてそっと戻した。
隣にいたのは、金髪の髪をした…おうじさまで、あれちょっとまて、ここ高校だよね。
なんで、おうじさま…??どうしてこんな、無駄に色男が多いのさ、
「なんでシュヴァーンがここにいるんだ?」
「ほんとうに、四年も続けて担任になるなんて、」
「冗談じゃねぇ…」
どうやら二人の話を聞くところ(まぁ挟まれているから、聞こえてしまうのだけれど)シュヴァーン先生は二人が中学の頃も担任をしたらしい。
四年間もあんなかっこいい先生が担任だなんて……う、羨ましい…!!
私なんて、おじいちゃん先生で耳悪くて、物覚え悪くて、まぁド田舎だから仕方ないけれど、それでもあれは…うん、ひどかった。
「……で、っと」
黒髪美少年の視線がこっちに向いたから、私は慌てた、顔、今絶対真っ赤だ。
「…えっ、どっ、な、に?」
「…いや、あんたのおかげで入学式、退屈したなかったぜ」
「うぅ…やっぱり笑ってたんだ、」
「そりゃ、後ろであんな会話聞いたら笑うしかね―な」
「だってあれはお母さんが……」
言って思い出したのか、またクツクツと笑いはじめた。私が「ひどい…!!」と言えばひらひら手を振るだけに終わる。
うぅ、この人薄々感づいてはいたけれど、実は結構鬼畜なんじゃないだろうか…!!
「ユーリ、からかうのは止めてあげてくれ、かわいそうだろう」
「…お、おうじさま…!!」
「…ぶっ!!」
嬉しさのあまり、つい口に出してしまったことば、また笑った黒髪におうじさまは冷たい視線を送る。
「ユーリ…」
「ははは―…っと」
一瞬おうじさまの後ろになにか黒く禍々しいものが見えた気がして、私は目を擦った。
「どうかした?」
「え、いや、なんでもない」
言うと、ハタリと思いついたように、おうじさまが言った。
「あぁ、僕はフレン・シーフォと言うんだ。よろしく」
「あっ、わたっ、私はアイリ・ファミナ。よろしくね、フレン」
「よろしく、アイリ」
フレン、フレン…そっか、おうじさまの名前はフレンって言うんだ。高校に入って初めて出来た友達に嬉しくなって、くるりと後ろを振り返った。
「えと、よろしくね、」
「ユーリ・ローウェル」
「うん、ユーリ」
えへへ、照れながら笑えば、ユーリも少しだけ微笑んでくれて、今までの不安が嘘みたいに消えて、涙が出そうになった。
ファーストコンタクト
「(それにしても、二人ともかっこいい、なぁ…)」
「(へぇ、あんな顔して笑うんだな)」
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