[携帯モード] [URL送信]
ひとめでみると

「アイリ―早くしなさい」

一階から響いてきた声に、はーい、と返事をして急いで着替える。なんていったって、今日は高校の入学式だ。昨日は不安で寝れなかったし、ぅう...考えるとまたお腹痛くなってきた。
一階からなお響くお母さんの声に急かされ、私はいわば、スクールバッグというやつを持ち部屋を出た。ほんとうに友達出来るといいなぁ...


学校に着いてみるとあら不思議腹痛は朝の倍に。お母さんごめんあたし緊張で死にそうだよとすがり付いたらあんたそんなに柔じゃないでしょと振り払われた。うぅ、もう、ほんと痛いよ。

お母さんに連れられてなかば引きずられて受付に着けばそれはもう美人な人がいて、え、なんだこの人。制服を着崩してるせいか、露出度が高い。スタイルもすごくて、出るとこ出てるというか…、私は無意識に胸をおさえた。

「あら、大丈夫?前に進まないと転んでしまうわ。それとこれ、パンフレット」
「はぃ!?あっ、はい、すみません、ありがとうございますっ」

弾かれたように渡されたパンフレットを受け取り前へ進んだ。あたしの慌てぶりが可笑しかったのかふふふなんて声が聞こえたけど知らないふり知らないふり。
顔に一気に昇った熱を必死に冷ましながらようやく席へ座る。

どうやらクラスごと一列に保護者席と生徒席に並んでいるようで、まだ来ていない人も多かったけれど、私は緊張でそれどころではなかった。

「アイリ、パンフレット、貸して」
「あ、う、うん」

さっき受け取ったパンフレットをお母さんに渡せば、「綺麗な学校ねー」なんて呑気に言ってくる。「そうだね」と返して、私は体育館をぐるりと見回した。
入ってくる時は緊張していて、ゆっくりみることが出来なかったけど、こうして見てみると、ほんとに、すごい、綺麗な学校だ。
私明日からここで勉強するんだもんな、それにしても広い体育館だ。
これからのことをぐるぐる考えていると、ふと、視界に黒い髪がうつった。
長くて、差し込む光に反射して、きらきらひかるそれ。目を奪われていると、その髪がふと目の前に落ち着いた。
…え?えぇ?前に座ったってことは、この人は私と、お、同じクラス、てこと、なんだろうか?
ぅわうわぁ、すごい、こんな美人さんが同じクラスなんて…!!友達になれるかな、話してみたいななんて、ドキドキしながらもそんなことを思った。

「それではこれから入学式の開会式をはじめます」

すぅ、と耳に響く声がマイクによって体育館に広がった。

「ほら、アイリ。いつもボーっとしてるんだから、ちゃんと話聞きなさいよ」
「わ、わかってるよっ。お母さんこそ途中で寝ないでよ?」

お母さんに言われながら前を向いていると、少しだけ、黒が揺れた気がした。

「なに言ってるのよ、お母さんはこう見えてね、」

しっかり者でね、お父さんはそんなお母さんが……、なんて言っているけど、私はそれどころではなくて、揺れた黒は笑っているようだった。
も、もしかして、会話聞かれたっ!?
うわぁ…!どうしようすごい恥ずかしい!!
お母さんはいまだにぶつぶつ言ってるし、私は恥ずかしさのあまり視線を下に落とした。……のだけど、目に入ったのは細かいチェック柄のズボン…??
う、そ、この人男だったの?!え、だって髪長いし、ぅ、でもよく見たら、身長とか体つきとか男だよね……。
ぅわぁあ、どうしよう、女の子とかって思ってて本当にごめんなさい、でも、でも男だけどすごい綺麗だと思います、はい!!

進んでいく入学式を、私はこれっぽちも聞いてはいなかった。




「(女の子にしか見えなかったの、ぅう、ごめんなさい)」
「(なんつー親子だっての)」


主人公の後ろはフレン\(^o^)/

[次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!