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予想外の放課後*03

F l a v o r e d T e a
 キミオモウ、


 喜葉も一緒にやろうよ、と泣く兄貴に付き合って空手を始めた五歳。
 喜葉が一緒じゃなきゃやだ、と駄々を捏ねる晴渡に折れてミニバスのクラブに所属した十歳。

 自分が意外と押しに弱いことはわかってる。この二人限定のような気もするけど。

 相手を思う気持ちが大きい場合、最終的に面倒くさいという文句を押し潰してしまうことが多い。

 ――そういうわけで。

 瀬戸喜葉、十五歳。
 気分転換気分転換!、と笑う晴渡に引き摺られてバスケ部の練習に参加しております。


「………はあ…」

 ほんと、まったく、何でこうなるんだか。

 俺が晴渡の腕を振り払えなかったからだけど。


『高校ではバスケやんねぇから』

 中学最後の大会からの帰り道。
 そう言った俺に晴渡は続けねえのかよと口を尖らせて不満気な顔をしつつも、小学生の時のようには駄々を捏ねなかった。
 仮入部の紙も本入部の紙も独りで貰いに行って、俺に一緒に行こうぜと言うことはなかった。

 なのに、何で、今。俺をバスケに誘うんだ。

 正式な部員になって一年用のメニューをやらせてもらってんなら、同じ一年と頑張りゃいいじゃねぇか。
 引退してからロクに運動してない俺の体力がどんだけ衰えてると思ってんだ。


 とか何とか胸中で愚痴りつつも、俺はそこそこ楽しみながらワンゲームを終えたばかりだったりする。
 バスケが好きなのは変わってないからな。

「大丈夫か?」

 ふいに落ちてきた声にタオルを被ったまま顔を上げると、小さな笑みを浮かべる部長が立っていた。

「へろへろのでろでろです。あと五分は立ち上がりたくもありません」
「ははっ、そんなに疲れたのか?」
「引退してからは体育の持久走以外、全然走ってないんで」

 月に二、三回は道場に行って汗を流したけど、空手とバスケは全然違うし、入寮してからは空手すらやっていない。

「やっぱりブランクあるとだめですね。晴渡がフォローしてくれたお陰でなんとか勝てましたけど」
「いや‥‥正直、あそこまでやるとは思ってなかった」
「…?」

 それはもしや、十分間丸々俺がPGをやるとは思ってなかったってことですか。
 大して動けないのは分かりきってるから、早々に他のメンバーに譲ると思ってた、ってことですか。

 やべぇ。晴渡の立場悪くしたかも。

「すみません、俺部外者なのに‥」
「あっ、や、そうじゃないって! そうじゃなくて…バスケから離れてたって言う割に、川上との連携が巧かったから」

 あ、なんだ。そういう意味か。良かった。

「瀬戸のPGと川上のSGを見たいって思ったのは嘘じゃないけど、あのゲームは瀬戸が感覚取り戻すだけで終わると思ってたんだ」
「‥実際、感覚取り戻すだけで終わりましたよ」
「そうか? 初っ端から現役みたいな連携プレー見せられて、びっくりしたぞ」
「……買い被りすぎですよ」

 タオルの両端を指で引っ張る。

 照れる。っていうか、恥ずい。





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