F l a v o r e d T e a キミオモウ、 四時限目が体育の日の昼休みは教室の人口率が高い。 普段屋上や中庭で食べてる奴らが出て行かないからだ。 俺と晴渡も授業に財布を持ってって、帰りに購買に寄って、そのまま教室で食べる。 動くのめんどくせーよ。教室でよくねー? アイツがいるから、という本音を隠して白々しい台詞を吐く奴らの視線の先には、昼食と一緒に買ったペットボトル飲料を大きく傾ける晴渡。 無防備な白い喉元が眩しいったらありゃしない。 一気に半分以上飲み干してぷはーっ、と満足気に笑う顔は爽快感120%で、その内スポーツ飲料か栄養ドリンクのCMオファーがくんじゃねぇかと思う。 つーか。 俺も買ってきたお茶飲みたいんだけど。かーちゃん。 「―――そう、全部で五段の棚。そこの上から三段目の左…、百均の小さなケースばっか? そこは下から三段目だろうが」 溜息をつくと、制服に着替えている旧友が小さく笑った。 喜葉ちゃんひどーい、じゃねぇよ。 うちの母親の駄目っぷりはお前もよく知ってんだろうが。 正直に言えばお前といい勝負だぞ。 「‥だもんで上から三段目。…ああ、その重なってるブルーのケースのいっちゃん下。紙に包まれてへーってんだろ? …ったく、大事なもんの場所くらいちゃんと覚えと…、…あ゛?」 あったのは通常貯金じゃなくて定額貯金、だと? 「アンタが定額貯金の通帳と印鑑どこに仕舞ったんだったかやって言ったんだろうが! …そうだったかやじゃねぇよ‥‥。あほ、おんなじ場所にあるわけねぇでや。全部バラそうっつった本人が文句言うんじゃねぇよ」 頭の中で探してる息子の身にもなれ。 「通常貯金は白い棚の真ん中の引き出しの、割り箸箱のそっこだわや。‥そう、ダイニング。右側。…あった? はいはい、じゃあな」 ブチッ。 一方的に通話を切って、紙パックにストローを挿す。 機械音痴の母さんは、買ってから半年以上経った今でも携帯電話の機能をよく理解していない。 だから毎回、変換がうまくいかないだの小さな文字や記号の出し方がわからないだのって、結局電話してくる。 メールならいつ貰っても問題ないし俺の都合で返信出来るからメールにしろ、って何遍も言ってんのにな。 あとで親父にメールしとくか。 いい加減、母さんに使い方覚えさせろ、って。 「相変わらず、おばさんと話す時はモロに方言出るんだな」 「…モロってほどでもねぇだろ。母さんだって半分以上は標準語だ」 「そりゃそーだけどさ。家族全員が都会育ちの俺からすれば、『おおっ、方言!』って感じがするんだって」 十年近くも一緒にいりゃあ、大して気にならなくなると思うんだけどな。 「それよりお前、さっきのはどういう意味だよ」 「さっき??」 「パス練の時に言っただろ。部長が俺のPGと晴渡のSGをもう一回生で見たいって言ってるって」 「‥ああ、あれ? どういう意味かって、そのまんまに決まってんじゃん」 「誰かと間違えてんじゃねぇの? 俺は引退して以来、ボールに触ったことすらねぇぞ」 「? 言ってなかったっけ?? 部長、去年の県大会の決勝、観戦してたんだよ」 漸く制服に着替え終わった俺に晴渡が告げたのは、予想外過ぎる答えだった。 「…………マジ?」 「大マジ。ちなみに俺たちが勝ったそこの五番、部長の従弟なんだって」 なんて狭い世の中だ。 NEXT * CHAP |