F l a v o r e d T e a キミオモウ、 「なー、喜葉。今度部活に顔出さねー?」 「出さねー」 「えー、いーじゃん。来いよ!」 「いやだ」 「なーんー、でっ! あ゛」 びゅーん、と四十五度の方向に消えるサッカーボール。 「! どこ蹴ってんだよ!」 思いっきり足振り上げて蹴ったら変なとこ飛んでくに決まってんだろうが。 お前はサッカー部じゃなくてバスケ部だっつの。 くそ、追いかけんのめんどくせぇな。 「ごめーん!」 手をメガホン代わりにする晴渡。 パス練で十五メートルくらい離れてるから普通に言ったんじゃ聞こえねぇんだろうけど、早くとってこいって急かしてるように見えるのは俺が捻くれてる所為か? 「……川上(カワカミ)って、意外とノーコンなんだな」 「‥ありがと」 隣で練習していたクラスメイトからボールを受け取る。 あれはノーコンじゃなくて考えなしって言うんじゃねぇの? だらしない顔で晴渡を見つめる奴には訊くだけ無駄か。 元の場所に戻ってパス練を再開すると、晴渡が同じことを口にした。 「喜葉ぁー、バスケ部来いってばぁー!」 「遠慮する」 「俺と喜葉の仲じゃん! 遠慮なんかすんなって!」 「お前が遠慮しろ」 部長に笑い上戸疑惑が浮かび上がってから早一週間と数日。 内緒にすると約束してくれた部長の言葉を信じるしかねぇじゃん!、とボタンを縫いつけながら気持ちを切り替えた俺はもう部長を見ても固まらず、顔が赤くなることもない。 そんな俺の変化が伝わったのか、今では部長も気軽に声をかけてくれる。 が。俺はあくまで晴渡の友人だ。 元気で明るくて可愛い晴渡とは正反対の、人見知りが激しくて無愛想な人間だ。 寵愛を受ける部員に招かれたからと言って、ほいほい出向くわけにはいかない。 「部長も喜葉がいーならいーって言ってたぞ!」 …は? 「喜葉のPGと俺のSG、もっかい生で見てみたいんだって!」 もう一回って何だ。生って何だ。 授業ではまだサッカーしかやってねぇぞ。 問いかける前に、集合の笛が鳴った。 NEXT * CHAP |