F l a v o r e d T e a キミオモウ、 「なんだよ、晴渡の奴……」 四時限目が終わって十分も経てば、早弁組以外の生徒は大抵食べ始めてる。 実際、持って来た昼食を抱えて屋上を出て行く俺を呆然と見つめた奴らのあんぐり開いた口の中には、食べ物が詰まっていた。 …うげぇ。リアルに思い出すのはやめよう。気分が悪くなる。 クラスや学年が違う所為で食事時ぐらいしか晴渡を見られない連中の気持ちも、わからないでもないけどな。 汚いものは汚い。 一瞬頭痛を催したが、結局何を言いたいのかと言うと、どうして俺は昼食片手に通ったばかりの階段と廊下を小走りで戻っているのかということだ。 いや、晴渡が送りつけて来やがったメールを読んだからなんだけど。 何で飲み物買うから先に屋上行っててくれ、って言った奴に呼び戻されなきゃならねぇんだ。 つーか、『至急、教室に舞い戻られたし!』ってなんだ。何ぶってんのかわかんねぇよ。設定は戦国時代か何かか。 「晴渡! お前、用があんならじぶん、か、ら…っ!?」 なんで。 ガラリと勢い良く教室のドアをスライドさせた俺は、晴渡の傍に長身の生徒を見つけた瞬間、停止した。 なん、で、ぶちょう、が。 え、え、マジで。何で部長がいんの。 会いたくなかったんですけど。 まだ気持ちの整理がついてないんですけど! 「喜葉、ごめん! あのさ、――――」 廊下から一歩足を踏み入れた状態で固まっている俺に、部長の傍にいた晴渡が駆け寄ってくる。 多分、俺を呼び戻した理由を話してるんだろう。けど、全然聞き取れない。聞こえない。 ていうか、旧友である俺の異常に気付け鈍感少年。 いや、気付かれたら困るのか。困るな。うん。 晴渡には絶対内緒にして下さい!!、と頭を下げた俺がバレるような素振りをとるわけにはいかない。 「……何だって?」 「だから、転びそうになったところを部長に抱きとめてもらったんだけど、その時に部長のシャツのボタン、取っちゃったんだってば!」 「…訊くまでもないが、敢えて訊こう。俺に何をしろと?」 「ボタン、つけて!」 「馬鹿者!」 すぱこん、と晴渡の頭を引っ叩く。 「いたっ! 何だよ、わざと取ったわけじゃねえっつの!」 そっちのことじゃねぇよ! ボタンを取った相手が部長で、しかもその部長を教室に連れてきて、ボタンつけの為に俺を呼び戻したことに対して怒ってんだよ。 つーか。 「自分で責任とれねぇことは請け負うな」 「…………ごめんなさい」 「‥、くくっ……」 押し殺した笑い声に視線をずらすと、晴渡の席付近で部長がお腹を抱えて口を押さえていた。 「!」 晴渡とのこういうやりとりは日常茶飯事だから、笑われても別に恥ずかしいなんて気持ちは沸いてこない。 今更…って感じ。部長にはこれより遥かに恥ずかしいところを見られてるし。 けど、部長の大笑いする姿が、あの時にそっくりで。 やばい。顔が熱い。 NEXT * CHAP |