F l a v o r e d T e a キミオモウ、 「おはよー」 「おー、おはよー」 数人のクラスメイトに適当な挨拶をしながら教室に入る。 視線が合うのはほんの一秒くらい。別に友達じゃないからな。 人懐こくて社交的な晴渡だったらお互いに笑顔になるんだろうけど。 向かう先は窓側の列の一番前。 入学式の後に引いたクジで俺の席はここに決まった。 あー、ねみ。机にでろんと突っ伏す。 最前列ってのが気に入らないけど、人見知りの激しい俺の最初の席としてはまあまあなんじゃないかと思う。 だって前後左右、全てに他人が座ってたら正直居心地悪いし。 絶対ストレス溜まる。 でも右隣は運良く晴渡になったから、まあまあどころかかなりいい席と言えるのかもしれない。 そんなことを考えながら、俺はゆっくりと目を閉じた。 「よーしーはぁー!」 机に鞄が置かれるドサッ、という音と、楽しそうな声に起こされる。 突っ伏したまま右を向けば一汗かいて生き生きとしている可愛い顔が見えた。 「お疲れ」 「おう! はらへった!」 腹減った、じゃねぇよ。 笑顔で手を差し出すな。 「ほらよ」 「サンキュー!」 胸中で文句を言いつつも俺の顔には微笑が浮かび、鞄から取り出した拳大のお握りを渡すと、晴渡は満面の笑みで受け取った。 「! ウメチラシだ!」 「ハナチラシだ」 「え、そうだっけ?」 自分の好きなフリカケの商品名くらい覚えとけ。 あ゛ーあ゛ー、もっとゆっくり食べろよ。喉に詰まらせても知らねぇぞ。 スポドリかなんかと一緒に……、って。 「…ん、ん、」 「幼稚園児かいなお前は!」 何でほんとに詰まらせんだよ。俺の思考でも読んだのか。 携帯用のタンブラーを鞄の口から引っ張り出して眼前に突きつける。 胸叩いてないでさっさと飲め。大馬鹿者。 「ん……っく、はーっ! あま! うま! ‥、いて!」 紅茶でご飯を流し込んだ晴渡は、タンブラーから口を離した瞬間、笑顔で俺を見た。ので。 無防備な向こう脛を蹴っ飛ばしてやった。 「あま、うま、じゃねぇだろ」 他に言うことがあるだろうが。 見ろ、お前の馬鹿っぷりにクラスメイトも呆れ…呆れて……ねぇな。 ここは男子校で、お前はものっそ可愛くて、クラスメイトの殆どはきらっきら輝いたお前に心を奪われてる。 極々一般的な反応を期待して教室内を見回した俺が馬鹿だったよ。うん。ごめん。 一瞬忘れてた。 NEXT * CHAP |