F l a v o r e d T e a キミオモウ、 「……飲めよ」 実際に淹れたのは俺だけど、小さい頃から兄貴や晴渡の面倒を見て母さんの手伝いもして、常に淹れる側にいた俺が淹れてもらう側になったのは、酷く久しぶりのことで。 気付いたらそう言っていた。 「……え?」 「別に寒くねぇし、俺は二杯目飲むから」 「でも、」 「飲みたいんだろ?」 「…うん。」 冷めねぇうちに飲めよ。 ちょっと強引に手渡すと、男は心なしか嬉しそうに「ありがと」と頬を緩めた。 ……デカイのに、小動物みたいだな。 さて、もう一杯淹れるか。 お茶っていうのは大抵、一人分の茶葉で二杯分美味しく飲めるから、二杯目っていうことに不満はない。 むしろこれはまだ飲んだことがないやつだからラッキーだ。 カップはどれ使ってもいいって言ったんだから、改めて了承を得る必要はないよな。 しかし…、よく見るとどれもこれも高そうなんですけど。 庶民育ちの俺には縁のなさそうなものばっかじゃねぇか。 何で庭師の待遇がこんなにいいんだ? どれが一番安いやつなのかわかんねぇよ。 まあ、普通に使えば傷つけることなんてないだろうけど。 ド サ ド サ ド サ ッ バ コ ッ ガ ッ 「…………何やってんだよ」 ガラス戸を開けてカップをとろうとした刹那、壁の向こう側で再び不穏な音が響いた。 また何かやらかしたんかいな。 取り出したカップを台に置いて覗き込むと、男が菓子箱やら菓子缶やらに埋もれて座り込んでいた。 「…、‥ご、ごめん。」 誰も謝れなんて言ってねぇよ。 「怪我は?」 「……え?」 「この落ちてるやつ、頭に当たったりしたんじゃねぇの? 足は?」 「…へ、いき。痛い、ない。」 ああそうか、平気か、痛くないのか。そりゃ良かった。良かった。が。 何で両手でほっかむり押さえてんだよ。 俺が無理矢理剥ぎ取るとでも思ったか。 お前と違ってデカくないから、バスタオル一枚で十分足りてるっつーの。 ていうか、室内でいつまでもそんな格好してて暑くないのか、コイツ。 「何が欲しかったんだよ?」 あ、頬、赤くなってる。やっぱ擦ったんじゃねぇかよ。 血は出てないから、軽く撫でときゃいいか。 「…おい?」 何で返事がないんだ。と思って視線を上げたら、何故か男は固まっていた。 「もしもーし」 「ッ!? え、あ、う、」 NEXT * CHAP |