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予想外の放課後*09

F l a v o r e d T e a
 キミオモウ、


「……飲めよ」

 実際に淹れたのは俺だけど、小さい頃から兄貴や晴渡の面倒を見て母さんの手伝いもして、常に淹れる側にいた俺が淹れてもらう側になったのは、酷く久しぶりのことで。
 気付いたらそう言っていた。

「……え?」
「別に寒くねぇし、俺は二杯目飲むから」
「でも、」
「飲みたいんだろ?」
「…うん。」

 冷めねぇうちに飲めよ。
 ちょっと強引に手渡すと、男は心なしか嬉しそうに「ありがと」と頬を緩めた。

 ……デカイのに、小動物みたいだな。


 さて、もう一杯淹れるか。
 お茶っていうのは大抵、一人分の茶葉で二杯分美味しく飲めるから、二杯目っていうことに不満はない。
 むしろこれはまだ飲んだことがないやつだからラッキーだ。

 カップはどれ使ってもいいって言ったんだから、改めて了承を得る必要はないよな。

 しかし…、よく見るとどれもこれも高そうなんですけど。
 庶民育ちの俺には縁のなさそうなものばっかじゃねぇか。

 何で庭師の待遇がこんなにいいんだ?

 どれが一番安いやつなのかわかんねぇよ。
 まあ、普通に使えば傷つけることなんてないだろうけど。


 ド サ ド サ ド サ ッ バ コ ッ ガ ッ


「…………何やってんだよ」

 ガラス戸を開けてカップをとろうとした刹那、壁の向こう側で再び不穏な音が響いた。
 また何かやらかしたんかいな。

 取り出したカップを台に置いて覗き込むと、男が菓子箱やら菓子缶やらに埋もれて座り込んでいた。

「…、‥ご、ごめん。」

 誰も謝れなんて言ってねぇよ。

「怪我は?」
「……え?」
「この落ちてるやつ、頭に当たったりしたんじゃねぇの? 足は?」
「…へ、いき。痛い、ない。」

 ああそうか、平気か、痛くないのか。そりゃ良かった。良かった。が。

 何で両手でほっかむり押さえてんだよ。
 俺が無理矢理剥ぎ取るとでも思ったか。
 お前と違ってデカくないから、バスタオル一枚で十分足りてるっつーの。

 ていうか、室内でいつまでもそんな格好してて暑くないのか、コイツ。

「何が欲しかったんだよ?」

 あ、頬、赤くなってる。やっぱ擦ったんじゃねぇかよ。
 血は出てないから、軽く撫でときゃいいか。

「…おい?」

 何で返事がないんだ。と思って視線を上げたら、何故か男は固まっていた。

「もしもーし」

「ッ!? え、あ、う、」





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