F l a v o r e d T e a キミオモウ、 しかしこれからも非正規部員として練習に参加するなら、せめてバッシュは買った方がいいだろう。 毎回初心者(入部希望者)の為に用意されているバッシュを貸してもらうのは申し訳ないし、このまま履いてたらあっという間に汚くなってしまう。 俺の部屋にバッシュが残ってるかどうか、近い内に兄貴にメールで訊いてみるかな。 …や、兄貴はだめだ。 入学式の直後に送られてきた『月夜がお金持ちのお坊ちゃま学校に編入してもうた!!(号泣)』っつー長文泣きメールを無視してるから、すっげぇウザメールが返ってくるに決まってる。 でも母さんだとバスケ続けることにしたの?、怪我は大丈夫なの?、って心配するから面倒なんだよなぁ。 親父は仕事で忙しいから俺の部屋で探し物する時間なんてあるはずねぇし、こないだ頼みごとしたばっかだし。 ……もう暫く、考えてみるか。 そう思って立ち上がった時だった、 ジ ャ ァ ァ ァ ァ ア ア ア ア ア ‥‥‥ 俺の身体に超局地的な雨が降り注いだのは。 「――――……」 「……………あ。」 信じらんねぇ、っつかありえねぇ。 確かに俺はしゃがんでたけど、絶対頭出てただろ。鮮やかな花の奥に、茶色の髪が見えてただろ。 百歩譲って俺の姿が判別不可能だったとしても、何で花壇の中央から水遣りするんだ。 普通端っこからじゃねぇの? 狙いを定めたみたいに勢い良くジャーって、なに。 考え事してて気配とか物音に気付かなかった俺も悪いけど、水を撒く時に周囲を確認するのは常識だと思いませんか、そこの人。 「………ごめん。」 ごめんで済んだら警察要らねぇんだよ、とは言わねぇけど。 なんだその棒読み。初めて口にした未知の言葉か。 びしょびしょになって張り付く前髪を掻き上げ、文句を言う為に閉じていた目と口を開ける。 が。 「―――…、茶摘のおばちゃん‥?」 数メートル先に立っている人物を見た瞬間、俺の口から零れたのはそんな言葉だった。 モスグリーンのスモック、白タオルのほっかむり、丸いビン底眼鏡。 違いを上げたらキリがないがパッと見の印象は限りなく茶摘のおばちゃんだ。 そしてお茶を連想させるモスグリーンのスモックを脱いだら100%不審者だ。 「…こっち。」 自分の格好が怪しいことに気付いていないのか、水を止めてホースを置いた男はぐるっと花壇を回り、前髪を掻き上げたまま停止している俺の腕を掴むと軽く引っ張った。 感情の欠片もない謝罪を口にした割に、悪いことをしたという気持ちはあるらしい。 コイツ、見た目はすっげぇ怪しいけど…不審者が入って来られるとは思えねぇし、不審者は花壇に水撒いたりしねぇだろ。 俺はデカイ男について行くことにした。 NEXT * CHAP |