F l a v o r e d T e a キミオモウ、 「喜怒哀楽の激しい普段の様子からじゃ想像出来ないと思うんですけど。アイツ、意外とストレス隠して溜め込むタイプなんですよ」 「‥そう、なのか? そんなにストレスが溜まってたのか?」 驚いて目を丸くする部長に頭のタオルをはずしながら頷く。 「誰とでもいいプレーが出来るくせに、俺が晴渡のやりたいことを正確に読みすぎるから俺以外のPGだとストレスが溜まる、って。スタメンとるまでさんざ言われました」 「…ああ、そうか。川上は一年の春からスタメンだったんだよな」 初めて聞かされた時には、先輩差し置いてスタメンに選ばれた人間が我侭言ってんじゃねぇよ、って叱ったし、二三年の中に一年が混じるんだからやりたいこと全てが出来るわけねぇだろ、って思った。 でも、『俺のパートナーはお前しかいない』って。言われたみたいで。 嬉しかった。 「我侭ですよね。こんなに巧い先輩たちとゲームが出来るのに、ストレス溜めるなんて。…ほんと、何様だアイツ」 俺、多分親馬鹿みたいな顔してんだろうな。 些か呆然としている部長を見てそう思った。 * * * 「喜葉、今日はどうすんの? 来んの??」 「や、裏庭の花壇行きたいからやめとく」 「ふーん。今日の喜葉ちゃんは葉っぱの喜葉ちゃんですか」 「……………」 「っ、や、やだなあ、喜葉ちゃんったら、そんな怖い顔して…」 「トリカブト引っこ抜いて来てやろうか」 「!!? きょっ、今日は練習前にミーティングあるんだった! じゃあにゃっ!!」 唇だけで笑った俺に殺気を感じたのか、晴渡は顔を真っ青にして弾丸の如く消えて行った。 ここの花壇にはトリカブトなんて植わってねぇのにな。馬鹿な奴。 つーか最後を噛んで猫語にするなんて、お前はどこまで可愛いんだ。 俺は悶えているクラスメイトを後目に教室を出た。 HR棟の昇降口から中庭を突っ切った先。特別棟の正面に裏庭の花壇はある。 「白、赤、ピンク、黄色……来ない間に随分カラフルになったなぁ」 競い合うように咲いているキンギョソウの前でしゃがみ込む。 小さな花の一つ一つは間近で見るとほんとに金魚みたいだ。 「‥‥五円玉で催眠術でもかけたんかいねぇ…」 首を傾げながらの呟きに返ってくる言葉はない。 それは相手が花だからか、それともそんなことはありえないと俺がわかっているからか。 相変わらず、川上晴渡という男の影響力は凄まじい。 部長以外の部員からは絶対敵視されると思っていたのに、何故だか俺は一部員のように受け入れられ、流されるように週に二回はバスケ部の練習に顔を出すようになっている。 入部届けを出していないから部外者という立場は変わっていないが、全く予想していなかった展開だ。 NEXT * CHAP |