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07
曲がりくねった季節に。
※12禁表現※


「…んっ……ん、…っ、は…ぁ、‥??」

 瞼を押し上げて、目の前にあるものを認識して、暫し沈黙。

「――……何してんだ、てめえ」

 喉の奥から唸るような声を出す。
 屋上での優雅な昼寝を、何で、日向に邪魔されなきゃなんねえんだよ。
 …って、ネクタイ解かれてるしワイシャツのボタンも外されてるじゃねえか。

「ヤりたきゃセフレとヤれっ、」
「お前、マジムカツク」

 て言っただろうが。

「…あ゛? てめえに言われたくねえんだよ」

 ムカついてんのはこっちだっつーの。
 途中で台詞遮られるわ、毎日毎日睨みつけられるわ、昼寝邪魔された挙句キスされるわ、で。
 いい加減、大人しくなった『狂犬』もキレんぞ。

「退けよ」
「………」
「退けって言って、っ…触んな!」

 離れるどころか近付いてきた日向の顔を反射的に押し返す。

「、……なんなんだよ、お前」

 指の隙間から覗く目が傷ついたような色を浮かべてるのは、気のせいだ。
 俺の声が情けないくらい弱弱しく聞こえるのも、気のせいだ。

「何がしたいんだよ」

 『狂犬』だった俺に恨みでもあるのか。
 夜の街で出会って抱いた女の中に、お前のお気に入りのセフレがいたのか。
 荒れまくっていた中学時代などなかったかのように、普通の生徒を演じていた俺が腹立たしかったのか。

 だから、あっさり『狂犬』に戻って生活している俺を手放したくないのか。

「ほっとけよ」

 何も言わない日向から目を逸らす。

「嫌いとか、憎らしいとか、許せないとか。そんなのはもう、どうでもいいだろ。十分だろ。‥‥もう、俺に関わるな」
「嫌だ」
「ッ!?」

 顔を押さえていた手を掴まれ、コンクリートに縫い付けられる。
 喧嘩なら勝つ自信があるが、押し倒された状態では体格で負けている俺が断然不利だ。

「お前はオレのだ」
「っ…や、め……、日向ッ!」

「お前は誰にも渡さない!!!」

 間近で叫ばれた言葉に、身体がビクリと震える。

「‥ッ…、…」

 激情を湛えた瞳。射殺すような視線。軋む手首。

 心臓が止まるかと思った。
 こんな風に感情を顕わにする姿なんて、見たことがない。

 肌を突き刺すような空気を消し、手からも表情からも力を抜いた日向は、俺の胸に顔を伏せた。

 ―――ああ、だめだ。


「オレのものになれよ」


 ―――呼吸も、意識も、心も、まだ、


「頼むから、なあ、」


 ―――俺の全ては、


「チハル」


 ―――日向に囚われたままだ。


「……馴れ馴れしく呼んでんじゃねえよ。強姦野郎」





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