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05
曲がりくねった季節に。
※15禁表現※


 昼休み終了のチャイムが鳴るまでぶらぶらするか、って思ったのが悪かったのか。
 それとも、何か音が聞こえるな、って傍にある窓へ視線を動かしたのが悪かったのか。

「ンッ、はっ、ああっ…ッ、けんせ、アッ、やっ…ダメぇ‥っ!」
「何がダメなんだよ。イイの間違いだろ?」
「ああんっ…こわれ、ちゃ‥こわれちゃうぅ…ッ!!」

 薄暗い空き教室の中で日向が男子生徒を抱いていた。
 喘ぎ声から察するに、あの日と同じ奴だろう。
 男にしては高めだから中学生くらいかと思っていたが、同じ高校の生徒だったのか。
 そう言えば校内で見たことがあるような…ないような?

 つーか、何で蒸し暑い午後に遭遇しなきゃなんねえんだ。
 ヤるなら全部の窓閉めてヤれよ。

「こんなんで壊れるわけねぇだろッ。淫乱野郎!」
「ひぁっ、ああぁっ、ああんッ!!」

 昼間っからよくヤるな、と思いながら気付かなかった振りをして通り過ぎようとしたら、ふいに顔を上げた日向と目が合った。
 ……は?
 ちょ、待て、何だ。
 何で突っ込んでたもん引き抜いてこっち来んだよ。
 まだ終わってねえだろうが。

「えっ……賢聖?? ちょっと!!」

 途中で引き抜かれた奴はぽかんとした後、窓に近付く日向に声をかけたが、日向は無視して窓を全開にした。

「テメェ、どういうつもりだ」

 三日振りの言葉がそれかよ。
 その質問はお前じゃなくて、お前に放置された奴が口にすべきもんなんじゃねえの?

「賢聖! 誰に話しかけてんのさ!」
「煩ぇな。消えろ」
「はァ? 消えろってなんだよ! そこに誰がいるって…、お前っ、堀田(ホッタ)‥!」

 下半身丸出しのまま近寄ってきた奴は、日向に隠れて見えていなかった俺をその目に認めた瞬間、呼び捨てした挙句、指差しやがった。
 …喧嘩売ってんのか?
 中学時代だったら即殴り飛ばしてるな。
 あの頃は「堀田」じゃなくて「武澤(タケザワ)」だったけど。
 俺が自分の成長を感じていると、眉を吊り上げた女顔の後輩は噛み付く勢いで口を開いた。

「お前、イメチェンしてちょっと騒がれてるからって、調子のってんじゃないの?? 賢聖はボクのなんだからッ、さっさと消えろよ! 邪魔なんだよ!!」

 調子のってんのはお前だろ。
 誰に向かって偉そうな口利いてんだよ。
 鼻の骨でも折って残念な顔に変えてやろうかと思ったが、実行に移す前に日向が言い返した。

「邪魔なのはテメェの方だ。消えろっつっただろ!」
「な゛っ…」

 怒鳴る日向と顔を赤くする後輩。
 何でヤッてた奴らが喧嘩してんだよ。
 俺にとっちゃ二人とも邪魔だし、消えて欲しいんだけど。
 …あ、俺が消えればいいのか。
 ここに用があるわけじゃねえし。

 黙って通り過ぎようとしたら、窓から上履きのまま出てきた日向に襟首を掴まれた。ぐへぇ。
 何しやがる、と文句を言う間もなく、そのまま隅の方へ連れて行かれる。

「何で勝手に帰った」

 …何で、だと?
 本気で言ってんのか、コイツ。

「アイツが相手してんなら、俺が待ってる必要はねえだろ」
「ふざけんな。合鍵も眼鏡も置いてって、携帯も替えやがって。どういうつもりだよ!」
「はっ、そんなこともわからねえのかよ。セフレの皆さんに訊けば一発じゃねえの?」
「テメェ…っ」

 胸倉を掴んで首を圧迫してくる日向の手首を掴み、力を込める。

「勘違いしてんじゃねえぞ、日向。俺はお前の下僕じゃない。性欲処理の道具でもない。いつまでも遊びに付き合ってやるわけねえだろ」

 もっと早くにこうしていればよかった、なんて。
 今更言ってもどうにもならねえけど。

「そんなにヤりたけりゃ一日中家に篭ってセフレとヤッてろ」

 日向に群がる連中は、日向が声をかければ喜んで相手をする。
 今だって呼び出せば食事中でも飛んで来るだろう。
 俺一人減ったところで、困ることや変わることは何もない。

「――オレから離れるなんて許さねぇ…」

 笑わせんな。お前の許しなんか要らねえよ。

「写メ消してあんのはお前も気付いて、んんっ!?」

 何でキスされなきゃなんねえんだよ。

「ぃ゛っ…、…ッ、ざけんな!!」

 唇を噛まれた瞬間、髪を掴んで日向を引き剥がし、右ストレートを叩き込んだ。
 くそっ…思いっきり噛みやがって…。
 げ、やっぱり血ぃ出てる。
 ワイシャツについたら洗うの面倒だってのに…。
 日向は口許を拭って顔を顰めている俺をキツく睨みつけた。

「テメェはオレのもんだ!」

 ……意味不明なこと言い逃げすんじゃねえよ、クソが。





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