曲がりくねった季節に。 ※15禁表現※ 昼休み終了のチャイムが鳴るまでぶらぶらするか、って思ったのが悪かったのか。 それとも、何か音が聞こえるな、って傍にある窓へ視線を動かしたのが悪かったのか。 「ンッ、はっ、ああっ…ッ、けんせ、アッ、やっ…ダメぇ‥っ!」 「何がダメなんだよ。イイの間違いだろ?」 「ああんっ…こわれ、ちゃ‥こわれちゃうぅ…ッ!!」 薄暗い空き教室の中で日向が男子生徒を抱いていた。 喘ぎ声から察するに、あの日と同じ奴だろう。 男にしては高めだから中学生くらいかと思っていたが、同じ高校の生徒だったのか。 そう言えば校内で見たことがあるような…ないような? つーか、何で蒸し暑い午後に遭遇しなきゃなんねえんだ。 ヤるなら全部の窓閉めてヤれよ。 「こんなんで壊れるわけねぇだろッ。淫乱野郎!」 「ひぁっ、ああぁっ、ああんッ!!」 昼間っからよくヤるな、と思いながら気付かなかった振りをして通り過ぎようとしたら、ふいに顔を上げた日向と目が合った。 ……は? ちょ、待て、何だ。 何で突っ込んでたもん引き抜いてこっち来んだよ。 まだ終わってねえだろうが。 「えっ……賢聖?? ちょっと!!」 途中で引き抜かれた奴はぽかんとした後、窓に近付く日向に声をかけたが、日向は無視して窓を全開にした。 「テメェ、どういうつもりだ」 三日振りの言葉がそれかよ。 その質問はお前じゃなくて、お前に放置された奴が口にすべきもんなんじゃねえの? 「賢聖! 誰に話しかけてんのさ!」 「煩ぇな。消えろ」 「はァ? 消えろってなんだよ! そこに誰がいるって…、お前っ、堀田(ホッタ)‥!」 下半身丸出しのまま近寄ってきた奴は、日向に隠れて見えていなかった俺をその目に認めた瞬間、呼び捨てした挙句、指差しやがった。 …喧嘩売ってんのか? 中学時代だったら即殴り飛ばしてるな。 あの頃は「堀田」じゃなくて「武澤(タケザワ)」だったけど。 俺が自分の成長を感じていると、眉を吊り上げた女顔の後輩は噛み付く勢いで口を開いた。 「お前、イメチェンしてちょっと騒がれてるからって、調子のってんじゃないの?? 賢聖はボクのなんだからッ、さっさと消えろよ! 邪魔なんだよ!!」 調子のってんのはお前だろ。 誰に向かって偉そうな口利いてんだよ。 鼻の骨でも折って残念な顔に変えてやろうかと思ったが、実行に移す前に日向が言い返した。 「邪魔なのはテメェの方だ。消えろっつっただろ!」 「な゛っ…」 怒鳴る日向と顔を赤くする後輩。 何でヤッてた奴らが喧嘩してんだよ。 俺にとっちゃ二人とも邪魔だし、消えて欲しいんだけど。 …あ、俺が消えればいいのか。 ここに用があるわけじゃねえし。 黙って通り過ぎようとしたら、窓から上履きのまま出てきた日向に襟首を掴まれた。ぐへぇ。 何しやがる、と文句を言う間もなく、そのまま隅の方へ連れて行かれる。 「何で勝手に帰った」 …何で、だと? 本気で言ってんのか、コイツ。 「アイツが相手してんなら、俺が待ってる必要はねえだろ」 「ふざけんな。合鍵も眼鏡も置いてって、携帯も替えやがって。どういうつもりだよ!」 「はっ、そんなこともわからねえのかよ。セフレの皆さんに訊けば一発じゃねえの?」 「テメェ…っ」 胸倉を掴んで首を圧迫してくる日向の手首を掴み、力を込める。 「勘違いしてんじゃねえぞ、日向。俺はお前の下僕じゃない。性欲処理の道具でもない。いつまでも遊びに付き合ってやるわけねえだろ」 もっと早くにこうしていればよかった、なんて。 今更言ってもどうにもならねえけど。 「そんなにヤりたけりゃ一日中家に篭ってセフレとヤッてろ」 日向に群がる連中は、日向が声をかければ喜んで相手をする。 今だって呼び出せば食事中でも飛んで来るだろう。 俺一人減ったところで、困ることや変わることは何もない。 「――オレから離れるなんて許さねぇ…」 笑わせんな。お前の許しなんか要らねえよ。 「写メ消してあんのはお前も気付いて、んんっ!?」 何でキスされなきゃなんねえんだよ。 「ぃ゛っ…、…ッ、ざけんな!!」 唇を噛まれた瞬間、髪を掴んで日向を引き剥がし、右ストレートを叩き込んだ。 くそっ…思いっきり噛みやがって…。 げ、やっぱり血ぃ出てる。 ワイシャツについたら洗うの面倒だってのに…。 日向は口許を拭って顔を顰めている俺をキツく睨みつけた。 「テメェはオレのもんだ!」 ……意味不明なこと言い逃げすんじゃねえよ、クソが。 NEXT * CHAP |