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▽本棚
妖花4〜庭師と嫁〜(不二×橘?)
不二と桔平







「散歩に行ってくっけん、
お留守番しとってね桔平」


「ああ、いってらっしゃい」


ちゅっと橘の額にキスをして、
この家の主人は出かけていった。



いつ見てもお熱い2人だ。
僕が庭の手入れしてるの忘れてるのだろうか?

剪定ばさみで、木の枝の手入れをしていると
お茶や菓子を盆に乗せた橘がやってきた。


「そろそろ一息いれてくれ、不二」


「うん、ありがとう橘」


土の付いた軍手を外して、縁側に座る。
熱いお茶を一口飲んで、ほっとしていると
橘が庭の方を眺めているのに気付いた。


「今の時期は色んな花が咲いて綺麗でしょ?」


「そうだな、俺はあまり花には詳しくないがどれも綺麗だと思う」



ふと橘の膝に置かれた手に目を向けると、その甲に怪我をしていることに気付いた。


「それどうしたの?」


「え?ああ、俺の不注意で火傷をしたんだ。一応水で冷やしたんだが…」


「ちょっと待ってて」


僕は、中庭の隅にこっそり植えておいたアロエの葉を取って橘のところに戻った。



「それ、なんだ?」


「アロエって言ってね、
火傷の傷に効くんだよ。
塗ってあげるから手を貸してごらん?」


アロエの透明で少し粘ついている葉肉を
指先に取り、橘の傷に丁寧に塗る。


「橘が火傷した時に使ってもらおうと思って植えておいたんだよ」


「そうか、すまないな不二。
なにか礼をしたい、何がいい?」


「何でもいいの?」


「何でもいいぞ?」


「じゃあ、僕がいいって言うまで
目を閉じてくれる?」


「こうか…?」


橘は僕のいうことを素直に聞いて
目を閉じる。

警戒心薄いなぁ、僕が何もしないと思ってるの?


「うん、そのままじっとしててね」


わずかに乾いた唇を舐め、橘の薄紅色の唇と重ねる。


「ふ、じっ?!」


驚いて目を開けた橘。
少しだけ頬が紅くなってる。


「まだ、いいって言ってないでしょ?」


「あっ……すまん」


「ふふ、橘って面白いね」


「か、からかわないでくれ…」


まるで口直しでもするように、
橘はお茶を飲むと唇を拭いた。

なんか、傷ついちゃうなぁ。


「僕とキスしたこと言っちゃだめだよ?
旦那様にバレたら大変だからね」


「不二も秘密にしてくれよ」


「えー、どうしよっかなぁ…」


すごい不安そうな顔をしてる橘を、
もう少しだけ困らせたかったけど嫌われたくないから、しょうがないな。


「分かった、秘密にしといてあげる
その代わりに…」


橘にそっと耳打ちして、頷いたのを確認すると、僕は庭の手入れに戻った。



「ただいま〜」


主人もちょうど散歩から帰ってきて、
橘はほっとしたような表情で、主人の元へかけていった。


千歳は橘の腰に手を回して、玄関の方へと歩いていった。
最愛の人に向けられた橘顔は、僕と2人の時に見せることはない幸せそうな顔で。





仕事も終わり、道具を片付ける僕の元に
千歳がやってきて懐から出した茶封筒を渡された。



「お仕事ご苦労さん、不二くん。
今日の手入れ賃ばい。
それから、桔平のお守りばしてくれて
ありがとう」


「こっちこそ、奥さんと話が出来て楽しかったよ。また、手入れが必要な時は呼んでね」

「そうだ、さっき散歩の途中で買った菓子があっけん、持ち帰るとよか。
きっぺー?さっきの菓子、持ってきてくれんー?」


台所に居るのであろう、橘に千歳が声をかけると、すぐに菓子を持った橘が来た。


「わぁ、嬉しいな。ありがとう橘」


「今日は、ありがとうな…し…周助」




にっこり笑ったまま、橘の方を見てる千歳がちょっと恐いけど、なんだか可笑しくて。
僕はそのまま千歳夫妻に軽く頭を下げて、門を出た。





ーーーーーーーー


秘密にする代わりに名前で呼んで?
っていうお願い。





ふじたち難しいです。



20130513 奥谷

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