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▽本棚
妖花2〜雨〜(木手+ちとたち*)






今日は原稿の締切り日だ。

木手は、それを受け取るために千歳邸に向かっている。

しかし、生憎の雨。
しぶしぶ傘をさして歩いていくが
既に着物の裾は水はねで濡れている。


ついていない。


心の中で悪態をつきながら歩いていると
大きな木の下に、佇む人影が見えた。


雨宿りをしているのだろう。
手ぬぐいで濡れた体を拭いては、
憎らしそうに雨が降る空を見上げている男。


普段なら気に止めず、そのまま通り過ぎただろうが、木手はなぜかその男が気になった。

「傘がないのですか?」


男の傍で立ち止まり、声をかけると
大きな瞳が木手を見る。


「はい。急いでいたもので。」


短い黒髪も着物もしっとり濡れていて、
体温を奪われているのか、少し震えているようにも見えた。


「そのままでは風邪を引いてしまいます。
これを着てください…
私がお家までお送りしましょう」


木手は自分の羽織を男に渡すと、男は頭を下げてから濡れた着物の上に羽織った。

朱色の番傘に二人並んで入ると、少しお互いの肩がぶつかる。

木手は、それを気を使って距離を取ろうとする男の肩に腕を回し自分の方に引き寄せた。

「あなたのお家まで、
道案内をお願いします」


「…はい。まずそこを左に曲がって…」


男の言葉通りに歩きながら、
木手はその横顔を観察した。


少し乾いた、薄い紅色の唇。白い首筋。湿気を帯びた長い睫毛。
短く刈り込んでいる髪のおかげで
さらけ出された耳。
そして唇を落としたくなるうなじ。


浮かぶ言葉がまるで、千歳千里の小説に出てくる人物のようだと気付いた。


「着きました。ここです」


たどり着いた先を見ると、今日自分が向かう予定の家の前だった。



「……なるほど、あなたがあの人の…」


「千歳」と書かれた表札は、この男の身分や立場を示しているのだ。


不思議そうな顔をする男をしばらく見つめていると、雨に混ざって下駄の音が近づいてきた。


「遅かったばいね、木手くん」


声の主は、そう言うと木手の隣にいた男を
自分の方に抱き寄せて奪った。


「…ええ、この雨の中
困っている人を見つけたので」


「うちの嫁を助けてくれたと?
ありがとさん。これ、今日の原稿ばい」


風呂敷に包まれた原稿を渡される。
そして、自分の腕の中にいる男の羽織を器用に脱がせた。


「それと、羽織も貸してくれたんね。
これは、洗ってからお返しするばい」


「そんな気を使っていただかなくても
結構ですよ」


千歳の手から自分の羽織を少し強引に奪い、そのまま羽織った。


「それでは、私はこれで失礼しますね」


千歳の腕の中に居る男の姿を見ているのが
なんだか嫌で、木手は足早にその場から立ち去った。



先ほどまでこの腕の中にいた。あの温もりはもうここには無い。

胸の辺りに渦巻く、苦しくも幸福と感じるような感情に気づかぬふりをして雨の中を1人歩いていく。









木手が立ち去ったのを確認すると、千歳は
桔平を連れて家の中に入った。



「随分と濡れて来たとね、桔平…」


「突然だったから…な」


なんだかそわそわと居心地悪そうな様子の桔平に千歳は気づいた。


「木手くんに何かされたと?」


「何も…されてない」


「じゃあなして、ここ熱くなっとっと?」


濡れた着物の上から兆しをみせるそこを
なで上げると、桔平の体が震える。


「さっき木手くんに肩抱かれとった。
まさかそれだけで興奮したとや?」


千歳は意地の悪い笑みを浮かべて、桔平を問いつめる。


「っ…やっ!……ちがっ」


執拗に先端を攻めると、冷たく濡れていたはずの着物に熱い液が染みてくる。


「じゃあ、木手くんの匂い?
羽織から体に移っとるもんね?
余所の男の匂い付けて旦那にいじめられたか思うなんち、桔平は淫乱な嫁さんばい…」


「んっあ……あ、ああ…ッ!!」


着物越しにぎゅっと根元を掴まれ、吐精を阻止される。


「余所の男にも興奮するような嫁さんには、
お仕置きが必要ばいね」


涙を浮かべた桔平の瞳に、楽しげな顔をした千歳の顔が滲んでうつる。





*****



腕を後ろで縛られ、熱を吐き出せないように根元にも蝶々結びを施された桔平は、裸で布団の上に正座させられていた。


着ていた着物は、「木手の匂いがついた」という理由で千歳が捨ててしまった。


千歳は縛られた桔平の前に仁王立ちして、見下ろしている。


「俺がなして、木手くんに
桔平を紹介せんかったと思う?」


「……」


「前の担当が桔平に惚れて、
危うく犯されそうになったん忘れたと?」


桔平は千歳の言葉に応えることなく、
俯いたままだ。

千歳が作家として活躍し始めた頃に担当していたのは大丸という男だった。

しかし、千歳が言うように大丸が桔平に手を出そうとしたため、担当を外された。

その後任が今の木手である。


「木手くんは、真面目で仕事もよう出来る男ばい。頭もなかなかよか…人のモンに手を出すような真似せんかもしれんけど…」


千歳の素足が、縛られて苦しそうな桔平の前を浅く踏む。

「っあ!…んんッ…」


「俺は、桔平が心配ばってん」



千歳は着物の合わせをずらし、すでに形を変えた高ぶりを桔平の口に押し込む。


「んぅ……ふ、うっ…」


「もっと口開けて、全部…そう」



頭を抑え込まれ、のどの奥にまで届きそうなほどの質量にえづきそうになるのを、桔平は涙を浮かべて耐える。


「ほら、ご奉仕せんね…」


「ん、ん…ぅ…」


桔平は頭を動かして角度を変え、舌先で舐め上げたり、音を立てて吸い上げたりして千歳に愛撫をくり返す。


「桔平はフェラチオたいぎゃ好きばいね…
そぎゃんと俺んこつ好いてくれとっと?」

千歳も快感に息を乱しながら腰を振る。


「ん、んんっ!」


桔平は頭を抑え込まれ抵抗も出来ぬまま
口の中を何度も犯され、どくんと脈打つ先から放たれる精を飲み干した。


「ふふ、全部飲んだとや桔平…」


ひとしきり吐き出された後も、唇で柔くはみ続ける桔平が可愛くて、千歳の口端がつい緩む。


蝶々結びで苦しげに反り立った先端を足の指先でつつくと、びくりと身体が震える。


「んあっ!」

「出せんくてつらかとね?
ばってん、これはお仕置きばい」


布団の上に乱暴に倒され、両脚を広げられる。

すでに透明なよだれを流している先を舌で舐めあげて口に含んでやると、桔平から悲鳴にも似た声が上がる。


「やめ、んっ、
だんな、さま…ああっ!!」


吐き出さぬまま全身を震わせ、
果てた桔平の顔を覗きこむと、荒く息を吐きながら虚ろな目をして涙を流していた。


「桔平、大丈夫?」


紅く色付いた胸の突起に指を這わせ、つまみ上げると桔平の口から吐息混じりのいやらしい声が漏れる。


「ん、んん……あっ」


突起を千歳の舌先で転がされ、強く吸われ
桔平の頭の中がじんわりと熱くなる。


「乳首いじめられっとが好きばいね、桔平」

歯を立てられる痛みすら快感に変わり、
仰け反って声をあげる。
縛られた先から溢れた体液に桔平の白い太腿が濡れていた。


「こぎゃん痛かこつされても、
興奮して喜ぶなん、桔平だけばい…」


それを塗り込むように太腿を撫で回すと、
羞恥にかられるのか、千歳から顔をそらして桔平はぎゅっと目をつむる。


「だんな、さま…」

「なあに?」

「も、ゆるして…」

「もう木手くんに近づかんて約束すっと?」

桔平が千歳の言葉に頷いたのを確認すると、

片手で根元の蝶々結びを解き、手で何度か扱く。
桔平は声にならない嬌声を上げて大量の精を自分の腹の上に吐き出した。


「ああ…んっ!…んーッ…」


ずっと我慢していた分、
量が多く、絶頂も長い。

後ろで縛った腕も解いてやると、すぐに千歳の体に抱きつきた。
唇を重ね、熱い舌を絡めて吸い上げると、
愛らしい声が隙間からもれる。


「桔平、舐めて?」


千歳の指を数本、桔平の口に近づけると
甘噛みしながら、丹念に舐めていく。


「ねこさんみたかね、むぞらしか…」


口から引き抜くと、そのまま桔平の後孔へと埋め込まれる。


「ひっ…あ」

「力抜いとって、桔平」

性急に桔平の中をほぐして、気持ちよくなる所をしつこく引っかく。
身を捩り、快感に悶える桔平の淫らな姿に
千歳自身も高まっていく。


「あんっ!や、あ!」

「気持ちよかと?桔平」


指を引き抜き、千歳は反り立ち硬くなった自身を収縮する桔平の中に挿入する。

「いっ、…ああぁ!」

先ほどの指とは比べものにならないほどの質量に、桔平の内壁もひきつるような痛みはあったが、順調に飲み込んでいく。


「きっぺん中、気持ちよかよ…」

「ん、んんっ」


桔平の両脚を高く持ち上げ、激しく揺さぶり、共に絶頂へ上り詰めていく。


「桔平、この世で一番好いとうから、
他の男に、欲情したらいけんよ…?」


意識が飛ぶ瞬間、耳元で囁かれた千歳の言葉に、快感で朦朧としながらも、しっかりと頷いた。










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20130316  奥谷

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