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▽本棚
写真家とライオン2(ちとたち)




俺ときっぺいが、テントで一緒に暮らすようになって数週間が経った。


一緒にご飯を食べたり、水浴びに行ったり
昼間の生活は以前と変わらないが、夜に肌を重ねる回数は少しずつ増えてきた。


きっぺいはその行為の意味を分かっているのかは定かではない。

多分、本能的に気持ちいいことに弱いのだろう。



事の最中に「好き」とか「愛してる」とか
言ってみたけど、きっぺいはとろけきった瞳で首を傾げるだけだった。



きっぺいが何を理解して、何を理解できないのか…これから研究しなくてはならないようだ。










今日は、ジャングルの中の木の実や果物が沢山生えている場所に来た。



「きっぺー、この実は食えっと?」


ここに来たばかりの頃は、ろくな知識もなしに食べられそうな見た目の物を食べて腹を壊したことがあった。
だから、よく分からない実は、きっぺーに判定を貰うようにしている。



きっぺいは、くんくんと匂いを嗅ぐと
こくりと頷いて俺に返す。
どうやら食べられるようだ。

きっぺいからOKが出た実をいくつか
持参した袋に入れていく。
すぐに袋は、しばらく2人で食べるのに困らないくらいの重さになった。


「きっぺー、もう帰ろ?」


先を歩いていたきっぺいの足が止まり、俺の方を振り返る。
俺は、空いてる方の手できっぺいの手を取り、元着た道を帰る。


自然に手を繋いではみたものの、
きっぺいは何とも思ってないのかもしれないと考えると、少し寂しい。



「きっぺー」

「ん…?」

「好きばい」

「………」


そう呟いた瞬間、少し後ろを歩いていたきっぺいが急に立ち止まった。


「きっぺー、どぎゃんし…」


反射的に振り向くと、顔を紅くして俯くきっぺいが居た。


「…おれも…ちとせが、すきだ……」


振り絞るような声できっぺいが呟く。

繋いでいた手から熱が伝わって、そのまま俺の顔にも伝染した。

しばらく2人して顔を紅くして向かい合っていた。




***



写真家とライオンのSSでした。
ここからちょっと続くかもしれませんが、
とりあえずここで終わり。


20121013 奥谷

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あきゅろす。
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