[通常モード] [URL送信]

長編
勘違い

その日勝家は、大学に行ってもあまり授業に身が入らなかった。
頭に浮かぶのは、あの夢の事。
ただの夢にしては嫌にリアルで、何か得体のしれないものを感じた。
それに、朝に見た白いカラス。男の言った「面白くて珍しいもの」とはおそらくあれの事だろう。

「何なんだ一体…」

勝家は大学の構内で小さくため息をついた。
ついに頭がおかしくなってしまったかとも思ったが、特に普段と変わった所も無い。
と、その時後ろから男の声がした。

「よお、勝家」
「伊達氏…! 今日はもう授業が無いのですか?」

振り返ると、一つ学年が上の伊達政宗が立っていた。
彼とは割と仲が良く、一緒に遊びに行く事も多い。

「おう、お前ももう終わりだろ?メシ食いに行かねえか?」

政宗の誘いに、少しばかり行こうか行くまいか迷った。
早く家に帰って夢魔とやらについてじっくり調べたい気もする。
だが結局今はまだ昼だからそこまで時間をくう事は無いだろうと、首を縦に振った。

「ご一緒させていただこう」
「何か食いたいもんあるか?」
「特に…それにあまり腹は減っていない」
「んー…じゃあ牛丼で良いか?」

政宗の問いに首を振って答えると、彼は一つ頷いて、歩き出した。
結局大学の近くにある牛丼屋に入り、2人とも同じ品を注文する。

「そういえば勝家、お前今日元気なくねえか?何かあったのか」
「え……」

唐突に言われた言葉に少し面食らった。
元気が無いとは、どういう事だろう。
自分では全くそういうつもりは無いし、そもそも普段から色々な人によく元気が無いと心配されている。

「元気が無いわけでは無いが…少し、気になる事があって……」
「What?」
「伊達氏は、インキュバスというものをご存知ですか?」

政宗は眉をひそめてしばらく考え、やがて「ああ」と頷いた。

「あれだろ?女の夢ん中に現れて淫夢を見せるってやつ」
「………女?」
「ああ。男の夢に現れるのは確かサキュバスっつー女型のやつだぜ。で、インキュバスがどうかしたのか?」
「いえ…」

女?
どういう事だ。あの悪魔は自分の事を「インキュバス」と言った。それにどう見ても男だ。
あいつは私を女だと思っているのか?

そう考えると無性に腹が立ってきて、それと同時に安堵した。
己が男である事を教えてやれば、今後あいつが夢に現れる事は無くなるだろう。

「ありがとう、伊達氏」
「お、おう?まあ何かあったら言いな」

その後昼食を食べ終わり、政宗と別れると真っ直ぐ帰宅した。






[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!