長編 嫌だとは思わなかった 男が近づいてきて、勝家が避ける間も無く肩に腕を回された。 そのまま下に引かれ、大人しく腰を下ろす。 「何なんだお前は。さっさと消えろ!」 勝家が男をじっとりと睨み声を荒げると、大げさに溜息をつきながらもニヤニヤと笑っていた。 「あんた分かってないみたいだからゆっくり説明してやる。まず俺はインキュバス。紛れもない男だ。調べたんだから理解してると思うけど、今までは女の夢の中に現れて色々やってたんだが、たまたま見かけたあんたが別嬪だから欲しくなっちまった。以上!」 「ゆっくりでも無ければ説明にもなっていない。とにかく迷惑だ。消えてくれ」 勝家の言葉に男の眉がピクリと動いた。 「あんたさあ……俺が悪魔だっての忘れてる?本当なら問答無用で犯すんだぞ。まあ大体の女は自分から求めてくるけど。とにかくあんたに拒否権なんか無えの。俺のものになれよ」 勝家の肩に回された腕に力が篭り、声が一段と低くなる。 男の迫力に勝家は思わず息を飲んだ。 近くで見る男の容姿は夢魔として女を誘うためだろう、よく整っており、恐ろしいと思うと同時に美しいとも思った。 「俺は別にあんたを孕ませたいとか思ってねえよ、男だし。ただあんたが欲しいだけだ」 「い…嫌だ。お前は悪魔で、私は人だ」 「だから何?関係無えよ」 男は勝家の顎を掴むと、勝家の唇に己の唇を重ねた。 唇を熱い舌でなぞられ、勝家の体がふるりと震える。 突然のキスにも関わらず勝家は不思議と彼を受け入れていた。 嫌どころか、気持ちいいとさえ思ってしまうのは彼が夢魔だからだろうか。 [*前へ][次へ#] [戻る] |