短編小説(オリジナル)
1 拘束/媚薬/注射/玩具
格好良くて、優しくて、頼りになって…。
ずっとずっと先生に憧れていた。
大人になったら、絶対先生みたいになりたいと思っていた。
「幻滅した?」
ぼやけた視界で、先生の唇が綺麗な弧を描く。
僕はずっと、騙されていた?
「許して、お願い、先生…っ、も…むり…」
小さい子供でもないくせに、僕の目からは大粒の涙が溢れてくる。
「も、やだ、やっ…」
放課後の誰も居ない教室で、僕の声と粘着質な音が響く。
どうしてこんなに涙が溢れてくるのか、自分でもわからなくなってきた。
叱られている訳でも、叩かれている訳でもない。
「で、でちゃ…っ、あッアア」
身体が痙攣し、頭が真っ白になって、僕の考えはぷつりと途切れた。
「由希くん、先生、出していいよなんて言った?」
「言って……ない、です…」
「そうだよね?じゃあ、どうしてイッちゃったの?」
涙を流し、荒い呼吸を整える。
先生に後ろから抱きしめられた体勢で、耳に直接吹き込むような問いかけに、ぶるりと身体が震えた。
昨日までは憧れの先生だった。
身長も高くて、爽やかで、優しくて。
ずっと先生みたいになりたいと、心の中で思っていたのだ。
「ごめ…な、さい」
沈黙の中で、僕のしゃくり声だけが響く。
「先生の手、気持ちよかったの?由希くん」
ぎゅっと唇を噛み締めて下を向く僕に、先生は責め立てるかのように囁いた。
(こんな先生、知らないよ…)
「…どうして…先生…、こんなことするん、ですか?」
僕の出した精液で濡れた手を厭らしく舐めとりながら、先生は少しだけ笑んだ気がした。
そして先生よりはるかに身長の低い僕を、ぎゅっと包み込むかのように強く抱きしめた。
「由希くんが悪いんじゃないか」
少し背中を丸めて、先生は愛しむように僕の耳元に頬擦りをする。
「由希くんがいつも先生のこと見てたの、知ってるよ」
「え?」
ちゅ、ちゅと音を立てて、耳、頬、首、と啄ばむようにキスをされる。
「気付いたら、先生も、由希くんのこと目で追っててね」
ゾクゾクと悪寒が走り、がっしりと抱きしめられた手を解こうとすると、先生は離さないと言うかのように僕を痛いくらいに抱きしめた。
「…ッ、う」
「ああ〜、両想いか、って」
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