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紅の女神


 ひんやりとした空気が頬を撫でていくのを感じ、重たい瞼をゆっくりと開ける。
 ここはアサヒの部屋。
 だが、いるのはアサヒだけではなかった。
 アサヒは被っていた布をずらし、上半身を起こす。

「あっ、おはよーございます〜!!」

 部屋の主が起きたことに気付いた人物は、寝起きにも関わらず大きな声で挨拶をする。

「おはよう…マナセ」

 アサヒは微笑み、寝台から降りる。そのまま窓の方へと向かい、空を見上げた。

「今日は寒いわね。灰色の曇天…。雪でも降りそうだわ」

 そう言って窓を閉める。

「そうですね〜。そろそろ降ってもおかしくないですよね〜」

 暢気な声で先程から今日着るアサヒの服を選んでいる。
 アサヒがマナセが開けた窓を閉めたことさえ気付いていない。

 いつから窓は開けられていたのだろうか?
 気付かなかった自身に苦笑しながら、アサヒは腕を摩りつつマナセの方へと歩む。

「モミジはどうしたの?」

 装身具をアサヒに手渡しながら、

「モミジはセンヤさまのお世話です。それでわたしはアサヒさまの朝の支度をさせていただけているというわけなんです〜!!」

 最後の方をやけに嬉しそうに話すが、アサヒは途中までしか聞いていなかった。

「それは、誰が?」

「えっと、長さまが言ったんですけど、なんだかモミジは言われる前から知ってた、という感じでしたねぇ」

 それはモミジが頼んだからだ。

 考えなくともすぐに分かること。
 きっと、ハグイは大切な客人の世話を、まだ頼りないマナセにやらせるよりは経験を積んだモミジの方が、例えアサヒ付きだとしても良いと思い、モミジの言うようにさせたのだろう。

 ――実際はアサヒの考えとは違うのだが。

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