CHANGE
6
「かっちゃん聞いてぇ!!新事実に俺っちもビックリぃ」
駆け寄ってきた荒川に眉間の皺を深める吾妻。
「どうなさったんですか?」
「なんとぉ鈴ちゃんはマスターの息子様だったのでーす」
(………マスター?)
「それは本当ですか!?」
「本当だよ。だって鈴花の父親は谷山不動産の長男、数年前から趣味でバーを経営しているそうだしね。決定的なのは名前が谷山文弥で一緒ってこと」
「…そこまで一致しているなら本当でしょうね。私達と同じくらいの息子がいるとも言っていましたし」
「よく見れば鈴ちゃん目元マスターに似てるぅ」
まさに蚊帳の外。
俺だけ理解できていないみたいだが、唯一分かるのは鈴花があの有名不動産の家の者ということ。
一人傍観していると隣に立っていた吾妻が説明しだした。
「城之内君は知っているか分かりませんが、私達生徒会4人はここら一帯でNo.1の族に入っているんです。マスターというのは私達のたまり場であるバー、COSMOSの主人のことです」
失礼かもしれないが、他の3人はまだしも吾妻は族なんて似合わない。
怪訝そうに見ていたら顔に表れていたのか“私は情報担当です”と言われた。
「なぁ、もしかして族ってVENUS?」
「なんだ鈴花知ってんのか?」
会長が感嘆の声をあげる。
「名前くらいだけどな」
「文弥さんに聞いてたのか?」
「親父からはあんま詳しく聞いてねーよ。親父の弟、俺の叔父さんが言ってたから」
「弟って初代総長のカイさんか」
「鈴ちゃーん。今の総長様はカオちゃんなんだよぉ。ちなみに副総長はつーちゃんでぇ俺っちとかっちゃんは幹部なのぉ」
「スゲー!!」
“カイさん”という人物の話が出た時、皆の顔に陰がかかったように感じた。
しかし荒川がすぐに話題を変えたのでそれも一瞬のこと。
だから俺はそれ程気にしなかった。
盛り上がって会話をする生徒会メンバーと鈴花。
吾妻まで行ってしまったので、一人立ち尽くす俺は今度こそ完全に存在を忘れられているだろう。
鈴花と生徒会の間に繋がりが発見されたこと。
それはこれから更に関わりが増えることに繋がる。
「はぁ」
(限りなく面倒だ)
憂鬱な気分になった俺の溜息に、盛り上がっている奴らが気付くはずもなかった。
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