嘆いて元に戻るのなら<043>
漂うのはいつからか。
そんなこと答えられない。
だって、何もわからない。
どうしてこんなことになっているのかも。
ただ、暖かくて心地良い。
何かに包まれているような、浸されているような――
「リ…ドル……」
急激に落ち着く体。
ああ。やってしまった。
布に包まれる、確かな感触。
『夢』だった。
さっきまでのは、そっくり全部。
カッコ悪い。
まどろみの中で発した自分の声で目覚めるなんて。
しかも、こともあろうか彼といた時間をまどろみと重ね、その名を呼んで。
こんなにも私はリドルを求めていたなんて――冗談じゃない。
友達だったんだ。
リドルは私にとってそんな俗なものじゃない。そんなものにしたくない。
きっと、見え始めた希望に舞い上がってしまっただけのことだ。
「――っ」
息を飲む、私じゃない存在を感じた。
その音に意識までが覚醒し、視界が確かなものに晴れていく。
そして気のせいだろうか、クリムゾンに若干の怯えの色を含ませたヴォルデモートさんがいた。
よりによって張本人に聞かれてしまうとは。
あまりにも泣きっ面に蜂な状況に私は苦笑いをするしかなかった。
「おかえり、ヴォルデモートさん。それとも――リドル?」
「はっ、なにを言うかと思えば……、思い出話か?」
呆れたように、かつ突き放すように、言い放たれようと核心は揺るがさせない。
私はもう気付いちゃったんだ。
それに、都合が悪くなってくると高圧的にはぐらかそうとしてきたなぁ、なんて記憶。
そんなものをさらに呼び起こさせてるなんて気付いてないんだろう。目の前の彼は。
「今はもう、思い出話じゃないよ。本人がいるのを過去とは呼ばないでしょ?」
「確かに……、私はかつてリドルだった。だが、この世界に良紀の知るリドルはいない。お前なら意味が理解できるだろう?」
そう、私が物事を口にするときはある程度の確信を得てからだった。
例え彼が今ヴォルデモートさんだとしても、それを記憶し素直に認めるぐらいはリドルが残っているんだ。
「そうだとしても、リドルは完全に死んだ訳じゃない。」
「何故、そう言い切れる」
「私がこうして生きていること自体が理由になるし、ましてや保護――居候させてもらっている時点でかなりの要素にはなってるでしょう?
ヴォルデモートさんだけなら絶対に有り得ない。」
芋づる式に現れる希望が加速度的に気持ちを上昇させるのが止められない。
「それに最初にヴォルデモートさんに会ったとき、私の名を呼びましたよね?少なくてもその時は確実にリドルだったはず。」
「そして極めつけ。あのストラップを持っていたこと。これもやっぱりヴォルデモートさんにはありえないこと。――だって、私を知っているのはリドルのほうだから、ヴォルデモートさんが私に関わる理由はない。」
「――これでも何かある?」
「……私はリドルを消したつもりになってただけだったとでも…?」
「うん。……リドルに話したいこと沢山あったんだよ」
リドルに会えたのがうれしくて、やっと話が出来るのがうれしくて、思わず笑った私に溜息の音が聞こえた。
「いきなり消えてゴメンね」
043:嘆いて元に戻るのなら
いくらだって嘆いてやるけど
戻れないなら、開き直って笑うぐらいしか出来ることはないじゃない!
―…―…―…―
ふふん!
どんどん良紀ちゃんのキャラ見失ってるとか気にしないもんね!
卿が大人しいなんて知らないもんね!
前回の反動か、会話文の異常な長さ多さとか別に珍しいことじゃないもんね!
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