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二つの意


「アヤナミ君。彼女が以前話していた、良紀君――いや、アレスと言えばわかるかな?今日から正式に君のとこに配属という形になった。よろしく頼む。」

「貴方様に仕え、その手足となれること、恐悦至極でございます。」

恭しく頭を垂れ、形式張った忠誠を誓う。
――その時はまだ、彼女は「その他の分類」の中にいた。


二つの意


「おい見ろよ、あれが噂のアテナだぜ」
「戦神(アテナ)ねぇ……、一体どこまで本当なんだか…第一アテナって女神だろ?ありゃどう見ても男じゃねぇか」
「ばか!アテナの本名は良紀っていってれっきとした女だよ」
「馬鹿はどっちだ!女があんな凄まじい身体能力持ってる訳ねぇだろうが!」
「事実、持ってるやつがいるんだからなぁ………ッ!!!」
「どうしたんだよ怖い表情(かお)して」
ちょうど肩越しの空中へと向かう目線を追う。

……そこには、今までの会話を彩っていた話題の張本人。

「……ぁ」
「なんだかとっても楽しそうな話をしてたみたいだけど、僕も混ぜてくれるカナ?」
「……う、いや…、その」
器用に良紀を避けてそこら中を泳ぎ回る視線。
「んー?それ何語?僕にもわかる言葉で話してくれないと。

………それとも、僕には聞かせられないことだったり?」
頬に手を添えれば、さらに身をかたくする。
「あー!良紀さん!こんなとこに居た!」
「コナツ……?なんかしたの?」
「ついにヒュウガ中佐が逃げたんですよ!」
「あちゃあ、大変だねぇコナツも……。で?」
「このまま中佐が見つからないと、未処理書類の殆どが良紀さんにまわっちゃいますッ」
「なぜ?」
「今のところ1番余裕があるのが良紀さんなんで、アヤナミ様が30分以内に発見出来なかった場合良紀さんを呼ぶように、と……。」
「……あのグラサンッ、いつもいつも!今日という今日はしょーがない、コナツはこのまま上に向かって探してって!僕は一旦上に上がってから下に向かうから!」
「わかりました!」
言うが早いか、背を向けて足を踏み出す。
足音が遠ざかってゆく。
「さーて、残念ながら用事が入っちゃったから君らとのお喋りも終りにしなくちゃね。」
茶化すように、やたらと芝居じみた動作で手を肩の高さに上げ、掌を天に反すがすぐに下ろし、溜息を吐く。

「君らの将来のために『口は災いの素』……覚えとくといいよ。」
恐怖感を掻き立てるには充分すぎるほどの言葉を残しその場を去った。

※※
『あまり彼らを虐めてやるな』
『ニケ。別に虐めたわけじゃ無い。』
『お前は強いのだから、あの程度気にする必要ないだろう?』
『だからコソだよ』
会議中のため人気の無い廊下にはコツコツと良紀の足音だけが響く。
『彼らはそんなつもりで言ったのではないのに可哀相ではないか』
『……私はアレスには戻らない』
『……まったく強情な子だ』
それを最後に会話は途絶えた。
といっても、相変わらず響くのは床を蹴る反響音だけなのだが。



刻むリズムの中に違和感を感じ足を止める。
微かに何かを小突くような音だった。

何かがいる。
それも気配を消せるほどの手鍛が。

…逃げられては面倒なことになる。

ただそれだけの考えで、地面を蹴る勢いそのままに音の聞こえた空間へ繋がるドアを蹴り飛ばした。


案の定、どうしても死角となってしまう蹴り飛ばしたドアの影に光るザイフォンの文字。
確かな殺気に跳躍し光の塊を避ける。

明らかに人一人を戦闘不能にするには大きすぎるそれに舌打ちをしながらも身を翻して、踵を振り下ろした。

が、あと数センチのところで避けられ殺気は左脇へと移る。



「……ッ!」



喉には無機質に感じさせられる冷たい感触。

それと、左手には咄嗟に出したニケの銃口へぶつかる物の感触。



薄暗さになれた目を愛銃を突き付けた対象に向けようとしていると、自分へ刀を突き付けている何者かが先に言葉を発した。










「……良紀ちゃん?」





≪curtainfall...≫


口調が堅いのは仕様です。
入れるつもりは無かったのですが、読み返せば返すほど、出せない〜の最初の台詞が不可解なので記憶から引きずり出してきましたー
【09/02/17】




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