それを戦友という(企画提出) 戦うことに疑問を持ってしまったのが全ての発端。 戦場に身を置きながら、引き金を引く行為に疑心を抱くなんて心臓に銃口を突き当てる行為に等しい。 戦うことに意義なんて求めていなかったんだ、これまでは。 考えなんてしなかったし、考える必要もなかった。 これはこれで私の道だとある意味開き直っていたところも否定できない。 難しいことなんて全部投げ出して、風を追い越す楽しさだけを追い求めていた。 冷静になって考えれば、かつてないエゴイストっぷり、なんて浅薄だったのだと呆れる気持ちばかりが浮かんでは消える。 「風に取り憑かれていた」との表現もあながち間違ってはいない。 ただ、いくら酷い軌跡を残して来たと言ってもこれを間違いだとは決して思わない。ましてや、自分が正しいと豪語する気もさらさらない。 セントラルビーイング、――ガンダムの出現と存在は確かに私に「私」を考えさせるきっかけにはなりはしたが、「私」を否定する要因にはなりえないのだ。 「良紀」 「……何か用?」 「“何か用?”どころでは無い。何かあるのは君のほうだろう。」 「……は?」 「近ごろ全てのテスト数値が著しく低下しているだろう、ちなみに“何か”の影響は数値だけでなく機体動きにも顕著になっているのに気付いてるか?」 「気付いてるも何も自分の事じゃん、知ってるよ」 「何があった」 「何もないって」 「このまま君が空から墜ちるのを黙って見ていろと言うのか?……なす術も無く奥歯を噛み締め、独りガンダムへの思いを積み重ねろ、と。」 「……そこまでして話させたい?」 「私の手に及ぶものであったと後に知るなんて後味が悪いからな」 「エゴイストめ」 「私をどう呼ぼうと構わないが、リリーも所詮は同類であるのを忘れてはいないだろうな」 「…わかったよ、話せばいいんでしょ」 元よりそう返事すれば良かったのだと言うグラハムに覚えた小さな敗北感を気付かないフリでやり過ごした。 重く濃い気持ちはなかなか外へ出て行こうとはせず、たかが一言を発する為だけに些かの時間が無駄に流れていく。しかし、怖いかと尋ねるグラハムの声にまんまと煽られ呆気なく姿を曝した。 「私の力は武力と暴力――二つのどっちかって考えてた。」 案の定「何を言い出すんだ、こいつは」という呆れに目の前に腰掛けてきた男の顔が歪む。聞き出しておきながら失礼なやつだと頭の隅に浮かぶが、眉間に皺を寄せた程度じゃ崩れない端正さに馬鹿らしくなって消えた。 「だってさ、武力は理性の上に、暴力は感情の結果に成立するものだと考えれば、私のは“何“なのかってことじゃない?どっちにも属されない気がして」 国を守る、人を守る――なんてカッコイイ理由で志願したわけでもない。 AEU、人革連、ましてやセントラルビーイングなんかに怨みがあって報復を画策しているわけでもない。 なら、何なんだ。 「そしてとうとう煮詰まってあのザマ。揚句、自分がしていることの名前も知らないっていう現状に抵抗感さえ持つなんておまけ付きでね。」 「……解っていたが、君は馬鹿だな。」 「あんたフェミニストじゃなかったっけ?」 「そういう扱いが欲しいのか?」 「いまさらそんなの御免蒙るね」(こうむ) 「なら良いだろ。」 「でもいきなりの馬鹿呼ばわりはいただけないよ」 「君がかつて選んだ道が未だ途切れてないなら……、どんなに霧が立ち込めていようが、どんなに入り組んでいようが、その道が有る限り突き進めばいい。」 「そんなの、理由が無いっ」 「理由なんてただの大義名分じゃないか。後からいくらでも作れるさ。時に流されることが無い物なんて死んだものと生まれていないものぐらいだ。君はそれらのように押し寄せる流れにただ、されるがままで良しとするのか?」 「わかんないよ、そんなの……。」 「私は、嫌だね。わからなかろうがなんだろうが、他の意志にされるがままなんて。」 「それは、あんたが強いから言えるの。」 力なんかだけの話じゃなくて。 心とか、気持ちとか、グラハム自身の信念っていった物が凄く強くて確固とした形を持っているから。 「わかるか?理想があるから悩めるんだ。つまり、良紀……君だって自分が気付かないうちに何かを魂に刻んでいるということだ。」 「そんなもの、自覚が無ければ――見えてなけりゃ意味なんて無いんだよ」 「なら見つけだせばいいだろう。簡単な事じゃないか。君の中のどこかで必ず、首を長くして主を待ってるんだから。」 「…………やっぱりあんた嫌い。」 悔しい悔しい悔しい悔しい。 気付くといつだってこいつに助けられてて、しかも本人は意識していないなんてどんなに私は情けないんだろう。 グラハムが意識の外で熟す程度の事でさえ私には出来ないと思い知らされるから、悔しい。だから気にくわない。でも敵わない。 考えて答えが出ないことは考えるだけ無駄なのだ、本当は初めからわかりきっていた。 「私は嫌いじゃないよ」 ずっと忘れてた。 「いつまでも背中見てばっかじゃないんだから」 いつも私の選ぶ道の先に居たグラハムを追い越したかったのがスタートだった。 「できるものならやってみるといい」 至極愉快そうに弧を画く口元に気付かないフリをして空を仰ぐ。 空は今日もただ青かった。 「やってやるわよ」 それを戦友という [スピカ] 提出 私的「戦友」の定義(恋人を超える関係でありながら最も壁のある関係)を裏テーマに据えてました。…………一応。 初めての企画提出。 緊張したーーーー!! *←→# [戻る] |